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個人経営の居酒屋でランチをやっている店でこんなことがある。つけ添えに昨夜のお通しの残りをそのまま出しているのである。色が悪くなって一部硬くなったような切干大根など出されたら、もう二度と行かなくなってしまう。こんなものなら出さない方がましである。

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大井町の駅から外れた場所にあるショットバーに一人でふらりと行ったことがあるが、ここは二度と行きたくない店だ。店には常連の親玉のような老人がいて店全体を仕切っている感じで、店員も一見の私にはほとんど相手してくれない。話しかけても一問一答という感じで会話に発展しない。そのうちに、仕切り屋の老人が「ピザ屋からピザを取ってみんなで食おうぜ」などと店員やなじみ客に言い出したので、さっさと店を後にした。こういう店は「一見さんお断り」とかにしておいて貰った方がありがたい。

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それに対して、そのすぐそばにある音楽バーは地下にありちょっと怪しげだがとても感じのよい店だ。ここも最初一人で出かけた。店員は若いが礼儀正しく、気を使ってよく話しかけてくれる。私に小さい子供がいると話したら、子供でも食べられる人気のカレーがあるので今度はお子さんも連れてきてくださいと言ってくれたので、その後は家族で行くようになった。子供はここのダーツがお気に入りで、まともに矢を投げられないのにしきりとゲームをしたがる。偉そうにカウンターに座った5歳の子供に対して、店員もきちんと相手をしてくれてとても好感が持てる。ただ、他のお客の迷惑になるので、休みの日の早い時間に行くようにはしている。

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つい先日もこんなことがあった。カミさんと荏原中延商店街を歩いていると、おいしそうな漬物を売っている店があった。1つ100円の品を2つ買おうとした時に、店員が「レジ袋必要ですか?それなら202円です」といったようだが、カミさんはよく聞いていなくて、単にレジ袋がいるかどうか聞かれたと思ったらしい。支払の時、レジ袋代2円かかると聞いて、私なら「ああ、そう」と流すところ、さすがにカミさん、「なら袋はいらないわ」といった。すると店員が、「それはずるいよ、もう使っちゃったから戻せません」と言った。

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よく聞いていなかったカミさんも悪いのだが、「ずるいよ」というのは客に言うセリフではない。確かに店員がそう言いたくなるのはわかるが、よく考えるべき。店員は一日中その商売をしているのだから、レジ袋が有料ということは当たり前と思っているかもしれないが、たまたま立ち寄った客からすれば、一般の小売店でそんなことを聞かれるとは思っていないのである。

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客にわかるようにゆっくりきちんと説明すべきは店員の役目であろう。毎日買いに来る常連客ならいざ知らず、相手は初めての客である。また、そうした行き違いがあったときに自分を反省せずに客に「ずるい」というのは子供じみている。たかが2円の袋で、客に不快な思いをさせたこの店は2円以上の損をした。できれば、「言葉足らずですみません、その袋はもう他に使えないのでどうぞお持ちください、200円で結構です」くらいのことを言えば客も恐縮し、また今度買ってやろうとなるのである。

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飲食店を経営するのは大変だ。店の前を歩く人の流れは自分の努力ではどうにもならないし、昼飯時に賑わったと思ってもそれは一回転で終わり、1時近くになると客は一人もいなくなる。客は安くておいしくて当たり前と思っていて、褒めてはくれないのに悪い点だけを指摘される、それも客のわがままだったりほとんど言いがかりのようなものだったり。

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客が来なきゃ来ないで困るし、客が増えてもピークとそうでない時の落差が激しいと、せっかくバイトを入れても遊んでいる時間が多いだろう。これは工場の設備をいかに100%に近い稼働率で安定させるかが経営上のセオリーであることと同じ。

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こうして考えてみると、そうか、自分たちの仕事(ソフトウェア開発)とずいぶん共通点があるなと気づく。以下、要素別に整理する。

・立地
事務所の立地も重要だが、SEO対策をしっかりとやって検索サイトで上位に来ることも大切。

・メニュー(品揃え)
和洋中、なんでも楽しめますというような店よりも、ある分野に特化して、それだけはよそにはないと思われるような商品を持っていること。特に規模の小さい店があれもこれもやろうとすると、力が分散する。まさに選択と集中が大切で、目標とする売り上げ規模を明確にすることで、無駄な経営資源を使わないようにすること。

・接客
いくら腕自慢でも、客を見下すような店に将来はない。客にこびへつらう必要はないが、気持ちよく対応すること。
リピート客や、口コミ客はとても重要である。混雑していて店に入れずに帰っていく客に対しては、何らかのフォローが必要。(次回500円引き券を配るとか)

・寛容度
子連れの客であろうと、大切にする店は繁盛する。ソフト開発でも、ITリテラシーのないお客にも気持ちよく対応すべきだろう。

・技術
職人としてはこれを一番アピールしたいところだが、客にとってはあまり重要ではない。そこの店の店主が吉兆で何年修業したとか、フランスの三ツ星レストランで料理長をしていたなどというのは、カジュアルな毎日行く店には必要ない。あまり技術を謳い過ぎると客からは鼻につくように感じられてしまう。さりげないけれど腕が良いという程度がちょうどよい。

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とにかく、お客の財布からお金を出してもらうというのは大変なことである。目先の損得だけを考えていてはすぐに行き詰まるだろう。商売の基本であるが、相手は人間なので、最初は損をしてでも相手のために尽くしてあげるという態度を見せることが大切である。そうすれば、今度はまたあそこを使ってやろうという気になってもらえるし、あそこはサービスがいいぜ、と他の客にも口コミで紹介してもらえるだろう。

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松下幸之助っぽい話になるが、謙虚になり、客の喜ぶ顔が見たいと心から思うことである。

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