新年度を迎えてから1カ月が経ちました。新たに社会人になった方はもちろん、人によっては新しいプロジェクトに参入したりして周りの環境が変化する時期ですね。

特に新人にとっては日々の研修で教わるIT関連の技術的なことはもちろん、会社のルールのことや通勤など生活習慣の変化が多々あることで、戸惑いだらけの1カ月だったと思います。

しかし、入社したばかりの数日間と比べると少しは慣れてきたと感じられるのではないでしょうか。

技術の習得といった観点で話しをします。私も新人の時は同様でしたが、初めて聞く言葉や概念がたくさん出てくると頭がオーバーフローしますね。オーバーフローという言葉も基本はIT用語なので今風(?)に言うと「パニクる」という表現がわかりやすいでしょうか。

私が新人としてデビューしたのは4月でしたが、最初の1カ月は右も左もわからない状態でした。プログラムを1ページ(100ステップくらい)理解するのに四苦八苦して何日もかかりました。プログラムは紙に印刷されており400~500ページ位を1冊のバインダーに綴じてありましたので、1冊を理解するのに何年かかるのかと考えると「恐ろしい」という気持ちがわいてきました。しかし、ある日会社の書庫にプログラムを綴じたバインダーが何十冊も収められているのを見て、先輩に「これ全部一つのプロジェクトで使われているものですか?」と尋ねたらこともなげに「そうだよ」と言われ「ああ、俺には無理だ」と絶望を感じた記憶があります。

そうこうしながらでも夏ごろには何となく要領がつかめてきて、秋には自分で考えてプログラムを書くようになり、翌年の夏には公共プロジェクトのリーダーを任されるまでになりました。考えてみると、「成長曲線」といわれるように物事を習得するスピードは加速がついて二次字曲線のようなカーブを描くものです。

子供の成長を見ると顕著ですが、生後1歳から2歳前くらいまではダーダーとかマンマ、バーバくらいの言葉しか発しません。それが2歳を過ぎるころから急にいろいろな言葉をしゃべり始めますが、これを「語彙爆発」と言います。技術の習得も同じように、例えばJavaScriptで書かれている文字列がまるで呪文のように訳の分からないものに思えたのが、いつの間にか急速に理解できるようになるものですが、それはプログラミング言語の理解における「語彙爆発」といえるでしょう。学習を始めた最初のころはその効果がなかなか見えにくいものですが、その時期の積み重ねが後に「爆発」を起こすための大切な修行期間であると思ってください。

私は毎日ウォーキングをする習慣がありますが、初めに近所にあるお寺の100段の石段を上ることにしています。100段ともなると下から見上げると結構な高さで、これを上るのかと思うと少し腰が引けますが、いきなり上まで到達しようという意識は捨てて、まずは1段1段を昇っていくことだけを考えます。そうして無心で1段1段上がっていくといつの間にか頂上に到達しています。技術の習得も同様で焦らずに1歩1歩理解していくことです。

キリストの教えに「今日1日の枠の中で生きよ」というのがあります。明日はどうしよう、来週の会議はどうしよう、納期の夏までにこの仕事は終わるのかしらん、来年はどうしよう、いつ結婚しようか(できるのか)、将来家を買えるのか、などと先のことを色々心配すると余計なプレッシャーで人生を暗くしてしまいますし、肝心の今現在をどう生きるかという点がおろそかになります。「今日1日の枠の中で生きよ」というのは、明日のことや終わってしまった昨日のことなどを思い煩うのではなく、まずは今日1日をどう生きるのかにフォーカスしろという意味です。これは長い石段を1歩1歩上るのと同じことです。

「さしあたる、その事のみをただ思え、過去は及ばず未来知られず」という言葉もあります。将来の計画を立てることはもちろん重要ですが、先々の心配や過去の後悔などに生きるエネルギーを浪費してはいけないよ、ということです。まずは今踏みしめている1段のステップを着実に上がることに注力しましょう。

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