【2010年5月24日の朝礼でのスピーチより】
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2010年、5月12日、クラウドコンピューティングEXPOの基調講演を聞きに行ってきました。前半の1時間が、セールスフォース・ドットコムCEOの
マーク・ベニオフ氏、後半の1時間がマイクロソフトバイスプレジデントのキリル・タタリノフ氏という、興味深い組み合わせでした。会場は主催者が「予想を
超える2千人が申し込みがあった」というだけあって、大入り満員という様相でした。
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参加者の様子からすると、やはり旬のSFDCの方を目当てに聞きに来たという人が多いようで、前半のSFDCの講演中はほとんど途中退席する人はいませんでしたが、後半のMSの講演になると席を立つ人がちらほらと見えました。
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講演の内容的には、やはり新興勢力でありチャレンジャーであるSFDCの方がパンチがきいていたように思います。次の講演者であるキリル・タタリノフ氏が
すぐそばにいるはずなのに、随所にMSのネガティブメッセージがちりばめられており、本人を目の前にして大丈夫なのかとはらはらするような場面がありまし
た。
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SFDCサイドはMSに対して、過去にこだわりすぎている、到来しているパラダイムシフトが見えておらず、いまだにソフトウェアを売ろうとしている、株式
の時価総額がアップ理に抜かれようとしているのは、投資家からも将来が無いとみられている証左、などと言いたい放題でした。
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対するMSも負けておらず反撃をしていましたが、面白かったのは「15年前にも同じことを言われたことがある、その時の相手はスコット・マクネリ氏であっ
た。彼の会社はSun
Microsystemsというワークステーションのトップ企業でしたが、今はその会社はどうなっているでしょうか?」という返し文句。確かにSFDCに
も同じような結末が訪れるかもしれないと思わせる説得力を感じました。
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しかし、プレゼンの内容は総じてSFDCが優勢だったように思います。両社とも日本のユーザ企業をゲストとして登壇させ事例の紹介などをしていましたが、
MS側は今一つクラウドというテーマとの結びつきが弱かったように思います。特に、実例の紹介でデジカメ写真をサーバにアップしてデジタルフォトフレーム
でスライドショーを見せるというデモは、ビジネスユーザが集まっている会場にはあまりふさわしくなく、その分、最後に持ってきたDynamics
CRMの説明が手薄になったように感じられたのが残念。
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SFDC側も、人形町の料亭の女将を連れてきたのはちょっと行きすぎか。利用し始めてまだ2カ月ということと、最大の効果が2拠点で情報を共有できたという、「クラウドでなくてもいいじゃん」と思わせるような感想は、ちょっと聞いていてつらかったです。
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MS側は余裕なのか、あまりテーマが明確でなく、特に前半は概論的な話が中心となり退屈で、この辺りから席を立つ人が増え始めました。観客は正直です。ま
た、ユーザ事例で持ってきた印刷会社のソリューションも、なぜAzuru上にシステムを構築したのかという点が全く伝わらず、聞いていて面白くありません
でした。
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一つSFDCが重要な発言をしました。少なくとも私にはそう感じられました。それは、日本にもデータセンターを設置するということです。さらりと言ったの
ですが、これはクラウドという性質上、サーバの所在などは本来公にするようなことではないのですが、米国にサーバがあるというとどうしても政府の監査を受
けるリスクがあるという、政治的な要因から、苦しいけれども妥協したという感じがしました。
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新しいものは良い、古いものは消えていくという自然の流れから、MSは守旧派的にとらえられがちですが、それだけでSFDCがMSに勝てるとは思いませ
ん。実際に今回のプレゼンでも、SFDCは単独で勝負するよりも何かと「AppleはMSを凌駕しようとしている」と、他社の力を借りた論調でした。どう
してもSFDCはCRMという1アプリケーションを武器としているわけで、MSと比較して絶対的な層の薄さが厳しいところでしょう。MSばかり見ている
と、今度は足元から競合が襲いかかってくるでしょうし、まだ先行きはどうなるかわかりません。