楽しんで行う
いくら自分が好きなことであっても、それを続けていくという過程において、どうしても辛く感じることもあるでしょう。ゴルフが三度の飯よりも好きだという人でも、スコアが思うように上がらずフォームを変えてみたりクラブを変えてみたりと結構悩んだり苦しんだりしています。
ましてそれが仕事となるとなおさらです。好きで始めた仕事でも、社内外の人間関係、思うように行かない進捗、時間の制約、次々に発生するトラブルなどなど、時には何でこんな仕事を選んでしまったのだろうと後悔することもあるかもしれません。
しかし、嫌だ嫌だと思って行動していると余計にストレスがたまります。どうかそのようなときは逆に楽しい気持ちで行うように頭を切り替えてみてください。以前にこんなことがありました。
便所掃除の話
私が勤めていたときの他愛ない話です。
何だったか忘れましたが、どうも私が何か同僚のS氏の気に入らないことをしたか、言ったかしたらしく、根に持ったS氏は私に何か仕返しをしたかったようです。そのようなときに年末の大掃除の役割分担をS氏が任されることになりました。すると彼は私に向かって、今こそお前に天罰を与えてやるというような顔つきで、「はい、阿部ちゃんは便所掃除に決まり!」などとうれしそうに命令しました。どうも子供っぽいやり口で、それだけにこちらもむかっ腹が立ちましたが、「なんの、それならば思いっきり楽しく徹底的に美しく便所掃除をしてやろう」と頭を切り替えました。
私の他にもう一人、後輩のO君が一緒に便所掃除をすることになりましたが、気持ちを切り替えたせいか、やってみると結構楽しかったのです。そして、その楽しい気持ちがO君にも伝わったのか二人して妙に元気よく、必要以上に丁寧に掃除を進めていました。O君も大したもので、「仕上げの磨き上げ行きまーす」と雑巾を持つと、素手で便器を磨き始めました。すると、別の場所を担当していた一人がそんな私たちの様子を見て一言、「こっちは楽しそうでいいなー」とうらやましそうに言ったのです。この時、私は心の中で「勝った!」と思いました。
楽志
楽しいと感じるとアルファー波が出て脳が活性化されるそうです。楽しいと感じるためには、スポーツをしたり映画を見たり旅行などをしなければ楽しくならないと考えている人が多いと思います。でもこれは他者に楽しませてもらうと言う受身の態度ですね。しかし、何かにお金を払って楽しませてもらわなくても、自分の気持ちを切り替えることで、たとえ苦しいことでも嫌なことでも楽しいと感じることが出来るのです。
私の比叡山の師匠が、人に頼まれてよく「楽志(らくし)」という言葉を色紙に書いていらっしゃいました。これは自分の志(目標)に向かうための行動は、楽しんでやりましょうという意味だと思います。受験でも子育てでも、人生の中には色々な目標があるでしょうが、その目標を苦しいものだと考えるととてつもなく重いものとなってしまいます。
楽しんでやると言うことは不真面目なことではありません。自分が楽しいと感じれば周りの人も楽しくなってきます。そのような心構えで行動すれば、きっと成功への道のりもずっと近いものとなるはずです。