【2010年4月12日の朝礼でのスピーチより】

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この仕事をしていると、組合や会社を運営しているお客さんから、メーリングリストやホームページを作りたいという話をいただくことがあります。
新しい取り組みに燃えているこうしたお客さんからは、期待と意気込みが感じられます。しかし、実際にシステムが出来上がり、環境が整ってしまうと、そのとたんに利用しなくなるということを何度か経験しました。

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メーリングリストや掲示板ができても、ほとんど利用しない。ホームページを開設してもほとんど更新しない。何となく見えてくるのは、ある何かを持っていな
いうちは、それがないからアレができない、コレができないと不満を訴えていたのに、いざそれが手に入ると、「いや、思っていたのと違うから」、「時間がな
いから」と別の課題を持ち出してしまうのです。

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これは私にも身に覚えがあることで、批判するつもりはありません。私の書棚には、これを読めばきっと役に立つと思って買っておきながら、ほとんど目を通し
ていない本がたくさん並んでいます。目新しいおもちゃを見つけて親にさんざんねだって買ってもらったのに、翌日にはもう飽きてしまうという様子に似ていま
す。私には幼い子供が二人いるので慣れっこですが。

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良くコンな言い訳を聞きます。
・規約が決まっていないから活動できない
・ノウハウがないからチャレンジできない
・こんな時代に生まれて不幸だ

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病院に行くとやたら自分の病気を自慢する人がいます。何回手術したか、これまでに何針縫ったか、どれだけ重篤だったかなどを競うのです。健康な人間からし
てみると異様な世界です。おそらく塀の中、つまり刑務所では「オレは通算10年くらい込んだ」とか、「オレは強盗殺人未遂」、「オレなんかは二人殺した」
とか物騒な自慢が交わされているのではないでしょうか。

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人間は、自分が持っていないものを見つけ出すのが得意です。そして、自分の欠点や達成できていない目標は、あれが無いから、これが無いからと理由付けをするものです。
日頃、金さえあれば幸せになれるのに、といっている人が仮に宝くじで1億円を当てたとしても、恐らく幸せにはなれないばかりでなく、とんでもない不幸を背負い込むかも知れません。なぜなら、元々幸せになる心構えができていなかったからです。

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人生はマラソン競技のようなものですが、スタートして走り出すよりも、「よーいどんの合図がかからないから走れないんだ」といっていつまでも行動を起こさ
ない人がいます。自分で走り出すきっかけを作る、つまり自分に「よーいどん」を言ってあげないと、だれも「よーいどん」を言ってはくれないものです。何か
のせいにして行動を起こさない人、愚痴だけを言っている人は、実際は自分自身で何もしないことを決め込んでいるのです。ですから、アレがない、コレがない
といって立ち止まっている人に、じゃあ手伝ってあげるよといってその障害を取り除いてあげたり、得たいと思っているものを与えてあげても、かえって恨まれ
るのがオチです。

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昔ある会社でSEとして働いていたときにこのようなことがありました。
後輩にWさんという女の子がいました。まだ22、3歳くらいのちょっとヤンキー系のお姉さんでしたが、とても愛嬌のある素直な子でした。その彼女とは別の
プロジェクトでしたが、席が近かったので何かとよく話しをする仲の良い関係でした。あるとき、彼女が元請会社との打合せから戻ってくるなり、ふくれっ面で
不平不満をぶちまけておりました。聞いてみると、仕様がいつまでも決まらないとか、約束した資料を出してくれないとかで、この業界では良くあることでし
た。

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それを聞いて、私は彼女の困っている状態を何とか解決してやりたいと思ってしまったのです。(よせばいいのに)
そこで、一体何が問題で、優先順位はどうなっていて、いつまでに何がないとどうなるのかと言ったことをヒアリングしました。そうすると、さっきまでエキサ
イトしていた彼女のテンションが見る見る落ちていったのです。さっきまで息巻いていたのは何だったのだと思いつつも、さらに話を進めました。

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ヒアリングの結果、まずはある資料が今週中に手に入ればよいと言うことが分かりました。私はその元請けの担当者とは親しかったので、今から電話して頼んで
あげると申し出ると、何故か彼女は激しく首を振って「そこまでしなくていいです」と懇願してきた。私は、「何を言っているんだ、これがないと困るんだ
ろ?」とそんな彼女のことは無視して電話しました。電話している間中、彼女は別の同僚になにやら訴えており、そのうちに泣きだしました。電話が終わると、
彼女は泣きべそ顔で「ありがとうございました」と他人行儀に私に礼を言いましたが、どう見ても感謝している顔ではありません。それ以来、彼女は以前のよう
に私に寄ってこなくなりました。彼女にとって私はとても余計なことをしてしまったようです。

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ちょっと前に男の脳と女の脳は構造が違いというような本を読んでなるほどと思いました。その本によると、男は問題解決志向で、女性は問題共有志向であると
いうようなことが述べられております。つまり、あのとき彼女は問題を解決して欲しいわけではなく、自分の境遇を誰かに話したかっただけだと言うことです。
これは別に男女の違いがどうこうというより、TPOの問題でしょう。会社で仕事をしているときは問題解決志向、喫煙室で雑談しているときは問題共有志向、
そんな感じでしょうか。私には女心が分かっていなかっただけと言うことです。

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人は、あれがないこれがないと愚痴るのが好きなのです。グチをこぼしていることを、問題を抱えて困っている人と勘違いして手をさしのべないようにしましょう。
井戸端会議で、旦那の稼ぎが悪いとか子供のできが悪いとか姑の意地が悪いとか、そのようなレベルの話には、ただ単に大変だねーと聞いてあげるのが良いようです。

でも、「人生にリハーサルはない」ので、不格好でも何でもとにかく走りだしましょう。

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