【11月1日の朝礼でのスピーチより】

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ファストフードやチェーンのカフェなどでは他店との差別化を図るために様々な工夫を凝らしています。そうした中、顧客の好みに合わせて様々なオプションを選択できるようにしている店があります。選択の幅が広がるということは、顧客からするとそれだけリッチな気分になれるわけです。

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しかしその反面、あまりにも色々なオプションを用意されると面倒くさいと感じる私のような横着な客がいることも事実です。私は元来、食事や着るものはありもので済ませるタイプで、モノをあれこれ見て時間を過ごすのは時間の浪費と感じてしまいます。これは子供のころからの性格です。小さい頃、母親と洋品店に行くのが大嫌いでした。あれを着てみろ、これはどうだといわれるのが苦痛で、一刻も早くその場から逃げだしたくなるのでした。今でもデパートの洋服売り場に30分もいると吐きそうになります。

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この性格は父親譲りのようで、昔、母と一緒に買い物に出かけた際、洋服選びに夢中になっていた母がふと気付くと父がいなくなっていたそうです。どこへ行ったのかと探してみてもどこにも姿が見えません。結局一人で家へ帰ってしまっていたそうです。

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そんな私ですから、注文がややこしいお店は嫌いです。カミさんはサブウェイが大好きですが、私は一人では絶対に行きません。のっけからパンの種類をどれにするか聞かれた日には、「普通でいいよっ」といいたくなります。しかしパンの種類に普通はないから始末に負えません。スタバもそうです。私はコーヒーは飲まないので「紅茶はありますか」と聞くと、テーブル上に置いてあるのとは別のメニューを見せられて選択を迫られました。聞いたことのない名称や用語が並んでいるので一瞬パニックになります。レモンティー、ミルクティー、ロイヤルミルクティーあたりが私のボキャブラリーの限界です。

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注文を決めてほっとしたのもつかの間、「サイズはいかがいたしましょうか」と追い打ちをかけてきます。大・中とか、S/M/Lならわかりますが、グランなんとか、だのトールだの、これまでの人生で聞いたこともないような用語がつかわれます。店の側が勝手に決めた変な固有名詞を客に押し付けるのはどうかと思いますね。
私は理系なので、どのサイズだと容量がいくらで1CC当たりの単価がいくらになり、どのサイズが一番お得で、自分の滞在時間や胃袋の容量とマッチするかという難しい考察に入ってしまいがちです。後ろで人が並んでいたりすると気が気ではありません。そうしたことがパッと見てわかる一覧表が必要です。こうしたやりとりは、まるで圧迫面接を受けているようなストレスを感じます。

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ずっと以前、「男は黙ってサッポロビール」というキャッチフレーズが流行りましたが、昔の男は無口がカッコイイとされたものです。渋い男の代表であるゴルゴ13(あるいは高倉健)が、店のカウンターでトッピングやサイズなどをあれこれ店員に伝えているのが絵になるでしょうか。飲み物は「ナマ!」、食事は「いつもの」と簡単に済ませられることが、私のような男にとってはかけがえもなくありがたいのです。

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だから、高級なフレンチレストラン(めったに行くことはありませんが)などで、ワインを注文した時の「テイスティング」というやつも困ります。一応儀式なのでその作法に従いますが、ちょっと注がれたワインを口にして、そのあと何を言うべきかで悩みます。何がしか感想を述べなければならないかとは思いますが、「すっきりしていますね」などと心にもないことを言ってしまうと、後でその自分の言葉を反芻して自己嫌悪に陥るのです。「勝手に飲むから黙ってワインボトルを置いといてくれ。腐っていたり酸化していたりしたらちゃんと伝えるから放っといてくれ」というのが本心です。

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すし屋では、私はほとんど好き嫌いはありませんから「お任せ」で適当に出してくれるのが一番助かります。お昼ならメニューにあれこれ書いてあっても「日替わりランチ」があれば何も考えずにそれを注文します。

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客にあれこれ指定させる洋物飲食店は、ぜひ「吉野家」を見習っていただきたい。普通の客は「並」か「特盛」という分かりやすい選択肢から選べばよく、余計なことに悩まなくてすみます。そして常連というか通になれば、「つゆだく」だか「しるだく」だの「ねぎ増し?」だとか、その道で、ある程度知見を積んだ人に許されるオプションを指定できるのです。

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黙っていればすっと標準的なものを提供し、こだわりの客にはそれなりに応えてあげる、これこそが顧客に対するサービスではないでしょうか。客からいちいち要望をヒアリングする洋物飲食店と、黙ってお任せの日本の飲食店、この文化の違いは、単一民族で同じ言語を話す島国日本と、陸続きで言語も多様な欧米のコミュニケーションに対するスタンスの違いから来ているのでしょう。でも、それをそのまま日本に持ち込み、おしゃれで新鮮な感覚として提供するのはわかりますが、何の工夫もなければいずれ飽きられることでしょう。

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