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現在の世界経済は戦後最悪とか100年に一度の「大ツナミ」等と形容されているが、日本はすでに90年代に深刻なバブル崩壊を経験している。
日本は失われた10年と呼ばれる低迷期に、多くの企業が深刻な打撃を被った。誰もがつぶれるなどと予想もしなかった山一証券、そのほか拓銀、長銀などが経営破綻し、特に中小企業の経営状況は深刻で、銀行の貸し渋りや貸しはがしにあった経営者の自殺なども枚挙にいとまがなかった。バイク用品を扱っている私の友人の仕事仲間で、自動車部品会社の社長同士が3名も心中するという事件があったりした。友人の話では、この社長達はとても責任感が強く面倒見の良い人たちだったとのことである。

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では、こうした事態をもたらす不況は恐れるべきものなのだろうか。私は一概にそうはいい切れないと思う。好況があれば不況もある、それは避けようのない波動であり、不況期があるからこそ企業は様々な経営改革を実行し、その体力を強めていくという面も否定できないからである。鉄はたたかれて強くなる。

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私は1990年に会社を設立した。当時の勤務先(後に上場する中堅ソフト会社)の上司からは、これから不況に向かう時期にわざわざ起業するのは危険だとか、当時すでに上場計画を進めていた自社の株を取得して儲けた方が良いのではないかなどと、独立することを思いとどまるよう説得されたものである。当時はまだバブル経済の余韻が残っていたので、独立するよりも上場予定の会社に残った方がいい思いができるというのが、その頃の常識的かつ客観的な意見だった。

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しかし、私が個人的にバブル期に何かいい思いをしたかというと全くそうではない。それどころか、嫌な思いをしたことばかりが印象に残っている。あの頃は、傲慢で礼儀知らずな人間が跳梁跋扈する時代だった。

その頃勤務先のソフト会社に転職してきた新人から聞いた話である。彼が卒業後に入社したのはバブル絶頂期を迎えていた不動産会社だった。何も知らない新人の彼が初年度に受け取ったボーナスの額を聞いてたまげた。なんと100万円以上ももらっていたのである。私はといえば、世間は妙に浮かれているのに月5,000円の駐車場代にも事欠く生活だった。私が反射的に彼をうらやましいと思ったのは当然である。しかし、バブリーな不動産業界のあり方に疑問を感じた彼は、手に職をつけたいと思い立ち、収入も低くなるのを覚悟で地味なソフト業界に転職した。立派な考えである、今頃は素晴らしい人生を築いていることを願う。

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多くの人々は私と同様、世間のバブル景気とは無縁で地味な生活をしていたと思われるが、そのような庶民にとって、たまたまノリノリの業界にいる、というだけでバブルに浮かれた馬鹿者たちは迷惑この上ない存在だった。

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