2008年12月14日から19日まで1週間ほど中国福建省に出張してきたので、その話をしよう。中国はこれまでにも2度訪れていて、今回は3回目の訪問。1回目は上海~青島、2回目は香港~東莞~深圳などを回ったが、今回の訪問先は本ではあまりなじみのない土地で、行ってみてもほとんど外国人は見受けられなかった。
◎中国の蒲田
出張先はアモイから車で2時間ほどの莆田市という場所。一緒に行った商社の方はウラタと発音していたがWikipediaで調べると日本語では「ホデン」と読むらしい。漢字の「莆」は日本にはない漢字なのでなんと発音すべきか悩む。住所としては「福建省莆田市」となる。宿泊先のホテルのガイドブックで知ったが、この地は以前には「蒲田市」と呼ばれていたらしい。おそらく漢字が略されて莆田になったのであろう。そう思うと、日本の蒲田を拠点とする私としても急に親近感がわいてきたのである。町の猥雑な感じもなんとなく懐かしい感じがする。
場所は海の向こうに台湾が見えるような場所なので暖かいはずだと思ったが、さすがに12月下旬なので結構肌寒く感じた。それでも日中はコートはいらない陽気である。
◎街の様子
莆田という街(正確には市)は観光地ではないので外国人の姿がほとんどない。大変に賑やかで活気にあふれている感じ。思ったより近代化しており、きれいなビルも目立つ。ただ、そこに至るまでの道すがらはかなり古い建物もあり昔風の中国を感じさせる村もたくさん見かけた。また、幹線道路沿いにはたくさんの石仏などが並んでいたりして、石材の産業が発展していると思われる。
莆田でも、最終日に宿泊したアモイでも同様だが、道に面した雑居ビルの1階部分はたいがい店舗や工場となっている。2間ほどの間口しかないようなそれらの店舗や工場ではそれぞれがそれぞれにいろいろなものを作ったり売ったりしている。窓枠ばかり作っているところ、一輪車を作っているところ、何やら板金でタンクのようなものを作っているところや、歩道に車やバイクを並べて売っているところもあれば、粗末なテーブルを置いて怪しげな食事を提供するところなど、見ていて飽きない。これだけ大量にものを作るということは、それだけ売れるということで、働けば働くだけ収入も増えるだろうから自然と活気も出てくるというもの。蒲田から品川あたりの第一京浜沿いも、かつてはこのような賑わいだったのではないかと想像させられた。
街は近代化している個所も多くみられるが、観光地によくあるコンビニとかファストフード店は一切ない。莆田という街はもともと色町だったらしく、夕方暗くなると街のあちこちにピンク色の照明をつけた店が目立ち始める。それらは一様に小さな店で看板には○×美容室と書かれていて、ピンク色の照明の部屋の中に女性が2、3人こちらを向いて座っているのである。最初はホテル前にある1軒を見て、とても珍しいと思ったが、あとで街中を歩くとそうした店が1ブロックごとに点在している。宿泊したホテルも立派なつくりだが天妃温泉旅館というなんともなまめかしい名前である。地方のちょっとした金持ちが遊びに来るという感じの街なのかもしれない。ホテルでは夜中までカラオケが響き、結構いい車に乗ったきちんとした身なりの男女が大勢でパーティーにやってきたりしていた。
◎交通マナー
以前に中国へ行った時も驚いたが、車両の交通マナーの悪さは相変わらずだった。向こうは右側走行だが、平気で反対側から車やバイクが向かってくる。そしてクラクションのけたたましいこと。向こうのドライバーは、とにかくよくクラクションを鳴らす。しかし、これだけ混沌とした交通状況だとクラクションも鳴らさないわけにはいかないだろう。何日も滞在しているうちに、不思議とクラクションにも喜怒哀楽の感情のようなものがあり、車同士のコミュニケーションのように聞こえてくるようになった。黙って何も主張せずにいたら存在しないものとみなされる、そんな中国のアグレッシブさを垣間見た気がする。
宿泊先のホテルからレストランへ行くのに交差点を渡らなければならないが、そこは大きな交差点で、こちらでいうと国道15号線と環8の交差点のような場所なのだが、信号機が一切ない。そこを歩行者は平然と渡っていくのである。もちろん周りの車からクラクションの合唱が浴びせられるが、蝉しぐれの森の中を歩くかのように泰然としている。車の方も、歩行者が邪魔だと言ってクラクションを鳴らすのではなく、相手にここに車がいるよと教えてあげているような優しい感じに聞こえる。このような街で暮らしていると、少々のことには動じず我はわが道を行くという心境になるのではないだろうか。それはそれで悪くないことだ。
◎昼休みの長さ
取引先の会社と打ち合わせしたりしてわかったことだが、当然のことで12時に昼休みが始まる。日本だと遅くとも1時には午後の業務が始まるが、向こうでは12時から2時までの長い休み時間をとる。そして夕方6時くらいには業務を終了するので、実質1日の勤務時間は日本より1時間少ないことになる。昼食をゆっくりととって、それから小一時間昼寝ができる。日本人の我々には少々間延びがするがこれも習慣の違いかと思う。中国にイタリアやスペインのようなシエスタがあるとは知らなかった。
◎物価
ビールもミネラルウォーターも2~4元とお安い。レストランでそこそこ豪華に食事をしても一人100元程度(1500円)、アモイでの昼食は小さな食堂だったがいろいろな料理を注文しビールをたくさん飲んだにもかかわらず一人30元程度だったから500円くらいで済んだ。ホテルの宿泊費部屋の広さの割にもかなり安い。
◎通信インフラ
出発前には、ネットが使えるか、携帯が通じるかと不安を感じたが、実際は何の問題もなかった。私はEMOBILEを持って行ったが、国際ローミングで簡単に日本と通話ができたし、どこへいってもアンテナが3本立つほど電波がよく届く。電波法とかの規制が日本よりも緩くて、ものすごく強力な電波を出しているのではないかと思ったほど。ちなみにホテルの部屋ではインターネットが使い放題で回線スピードも申し分なかったのがうれしかった。