ここのところ、ニュースやSNSでは「AIに仕事を奪われる」「リストラの嵐が吹き荒れる」といった、ネガティブな話題をよく目にします。
確かにそうした側面はありますし、これからその傾向はさらに顕著になってくると私も予想しています。しかし、歴史を振り返れば、「なくなる仕事」があれば、それ以上に「新しく生まれる仕事、拡大する市場」が必ずあるのです。
最近、ある興味深いレポートを読みました。アクセンチュアやマッキンゼーといった大手コンサルティング業界でも、これまで若手が担当していた資料収集やパワーポイント作成といった業務が、AIに代替され始めているそうです。「有名大学を出て大手コンサルに入っても、活躍の場がなかなか得られない」という声すらあります。
では、コンサル業界の市場規模がこれから縮小していくのかというと、予測は真逆です。むしろ、今後さらに増大していくと見られています。
理由はシンプルです。これまでは高額なコンサル費用を支払える大企業や自治体しか利用できなかったものが、AIによる生産性向上で価格が下がり、これまで手の届かなかった中小企業にも一気に普及していくからです。結果として、顧客の数が爆発的に増え、市場全体が大きくなるというわけです。
この話、1980年からコンピューター業界に関わってきた私には、非常に腑に落ちるものがあります。
パソコンが普及する以前の1980年前後まで、コンピューターシステムを導入できる企業や団体はごく一部に限られていました。ハードウェアがとてつもなく高額だったからです。
私が20代の頃、社会インフラシステムで使用していた「FACOM U1500」というミニコンは、一式で約2,000万〜5,000万円、今の物価に換算すると5,000万から1億円もしました。そこにソフトウェア開発費や専用のコンピュータルームの建設費などが乗るため、莫大な金額になります。ですから、当時の私のお客様は浄水場、電力会社、首都高速や日本道路公団といった大組織ばかりでした。
しかし、その後パソコンが普及することで、ミニコン以上の性能を持つコンピューターが100万円程度で買えるようになり、状況は一変しました。これまで導入できなかった中堅・中小企業、さらには個人ユーザーまでもがこぞって購入し始めたのです。
1億円のコンピューターは国内で1万台も売れませんが、100万円のパソコンなら1,000万台売れます。掛け算をすれば一目瞭然、「1兆円の市場」だったものが、一気に「10兆円の市場」へと、10倍に跳ね上がったわけです。単価は下がっても、より多くの分野や階層へ普及していくことで、コンピューター産業は爆発的に拡大しました。
この大きな変化の中で、消えていった職種もあります。当時、私の周りには「キーパンチャー」と呼ばれる方々がいました。手書きの文字をタイプライターでデータ化する専門職です。
当時は、私たちソフトウェアエンジニアが紙のシートに鉛筆でプログラムコードを書き、それをキーパンチャー会社の方が1日1回回収しに来て、打ち込んだものを紙テープやIBMカードという紙媒体にして翌日納品してくれる、という流れでした。
しかし、パソコンの普及によって誰もが自分でキーボードを叩くようになると、キーパンチャーという仕事はほどなくして消滅しました。
では、それで業界が衰退したのでしょうか? 違います。
ひとつの職種が消えた代わりに、それを遥かに上回る「ソフトウェア開発」の圧倒的な需要が生まれ、それから長い間、現場では深刻な人材不足が叫ばれるほどの巨大な市場が誕生したのです。
昭和の時代には「そろばん(珠算)の免許」を持っていることが就職に有利だったものが、今では趣味の世界になったのも同じことです。
今、私たちはまさに、それらと同じような「歴史的な大転換期」を再び迎えようとしています。
この大きな変革を前にしたとき、過去のやり方に固執して「仕事がなくなる」と恐れるのか。それとも、新しい市場が広がる「最大のチャンス」と捉えて自らを変革していくのか。
当社としては、もちろん後者でありたいと考えています。この変化を恐れるのではなく、むしろ大きなチャンスとしてワクワクしながら、私たち全員で次のステージへ進んでいきましょう。