入社式での挨拶

入社された皆さん、本日は誠におめでとうございます。

いよいよ社会人として、自分の人生を自分の足で歩み始めるわけですね。私も自分の娘が社会人になったときは、親として一つの役目を果たした安堵感とともに、「ちゃんと社会の荒波を渡っていけるだろうか」とヒヤヒヤしたことを思い出します。皆さんも緊張の中での船出かもしれませんが、きっとご家族も同じように、心配しつつも温かく見守ってくださっていることでしょう。

先日、入社3年目になる若者からこんな話を聞きました。彼は毎年100人以上を採用する大きな会社に入社したのですが、今年の新人研修から突然、新卒者全員に「テレアポの実務訓練」が導入されたそうです。「自分の期じゃなくてよかった」と彼は胸をなでおろしていましたが、私はこれを経営者としての少し違った目線から捉えました。

おそらくその会社は、数年前に今の新卒採用計画を始めた頃から状況が大きく変わってしまったのでしょう。「AIの飛躍的な進歩」です。AIの台頭により、これまで通りの人員配置や業務のやり方では立ち行かなくなり、急遽、新人に求める役割や研修内容を大きく転換せざるを得なかったのではないでしょうか。

皆さんもニュースで目にしたかもしれませんが、先日も世界的な大手IT企業(オラクルなど)が数万人規模の人員削減を計画していると報じられました。日本の1年間の新卒者がおよそ60万人ですから、その数パーセントに匹敵する人たちが、たった一社の決断で職を失うかもしれない時代です。

私はよく、この劇的な変化を「AI津波(AI-Tsunami)」と表現しています。「アメリカのレイオフの話でしょ」「自分たちには関係ない」と対岸の火事だと思っていると、津波はあっという間に足元までやってきます。これからの時代、ただ漫然と過ごしているだけでは、IT技術者として生き残っていくことはできません。

さて、少し厳しい現実のお話をしてしまいましたが、では「私たちはどうするべきか?」ということです。

皆さんが入社したこの「クオーレ」は、規模としてはどこにでもある中小のシステム会社に見えるかもしれません。しかし、実は業界の中できわめて特異で、恵まれた環境を持った会社であることを、ぜひ今日、認識してほしいのです。

日本の2〜300人以下のソフトウェア会社の多くは、エンジニアの労働力を提供するSESが中心であったり、受託開発でも大手SIerの下請け(2次請け、3次請け)であることがほとんどです。

しかし、クオーレは売り上げの7割を受託開発が占め、しかもその100%がエンドユーザー(お客様)との「直接取引(元請け)」です。これは本当に珍しいことです。

AIという津波が迫る中、それに飲み込まれるのか、それともその強大な波を乗りこなすのか。

その分かれ目は、ただ指示されたコードを書く「作業者」で終わるか、それとも直接お客様と向き合い、提案から要件定義、実装、保守、セキュリティまでを担える「フルスタックエンジニア」、あるいは「DXコーディネーター」へと成長できるかどうかにかかっています。この二つは、明確に生きる世界が違ってきます。

では、どうすればその後者になれるのか。

それはまさに、当社のように「元請けとしてお客様と直接仕事をする環境」に身を置くことです。提案、交渉、予算の調整、チームマネジメントなど、下請けの仕事では決して経験できないスキルを、皆さんはここで積むことができます。

もちろん、それは決して楽な道のりではありません。下請けの場合は商流の間に同業者が入っているので「技術的な難しさ」を理解してくれますが、直接のお客様は時にシステム開発の裏側を知らないからこそ、厳しい要求を突きつけてくることもあります。

ここで、皆さんにお伝えしたい言葉があります。「艱難汝を玉にす(かんなんなんじをたまにす)」です。

困難や苦労を乗り越えることで、人は立派に磨かれ、価値ある人材になるという意味です。これは、ただ「理不尽な苦労に耐えろ」と言っているわけではありません。お客様と直接向き合うことで生じる壁や苦労は、AIには決して代替できない「人間としての交渉力や解決力」を鍛えてくれる、かけがえのないチャンスだということです。

別に取って食われるわけではありませんから、安心してください(笑)。

まずは日々の生活、目の前の仕事を実直に遂行していけばいいのです。時に難しいことや苦しいことがあっても、「これは自分をDXコーディネーターへと鍛え上げてくれている質の高い経験なんだ」と前向きに捉え、これからのクオーレでの日々に挑戦していってください。

皆さんの成長と活躍を、心から期待しています。本日は本当におめでとうございます。

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