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会社で加入している健康保険組合の保養所をよく利用する。ここは会員にはとても安く利用できる。館山にもこうした施設があり私達一家のお気に入りである。先日、GWの初めにも1泊で出掛けてきた。以前は山道を走らなければならなかったが、今は館山道が整備されアクアラインと直結しているのですんなりと目的地まで行ける。山道を走るのが好きな私には少し物足りなくなってしまったが。
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そんな保養所での一つの楽しみは夕食である。季節の素材を使った懐石料理が供されるが、1泊食事つき5,000円という料金からは想像できない豪華さにいつも驚かされる。
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普段は懐石料理など食べる機会は殆どないが、このときとばかりに堪能する。そして毎回思うことがある。懐石料理については何の知識もないが、一品一品タイミングを見計らって出されるこの手法は世界でも誇れる日本の食文化で、そのスタイルは西欧料理にも影響を与えているらしい。たしかに、海の幸、山の幸を様々な料理法で客を飽きさせず、舌だけではなく目も楽しませてくれるとてもリッチな気分になれる料理である。しかし、そうした品々を口に運びつつ考えることがある。
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多彩で新鮮な食材が様々な工夫を凝らした調理法で出されるのを見て食すると、そこに自然の豊かさを感じずにはいられない。そして、そうした豊かな食材、文化、人の思いというものに感謝したい気持ちになってくる。このあたりはフランス・イタリア・中華料理には存在しない概念ではなかろうか。あちらは、これでもかというように人間が知能を傾けて征服した結果としての料理。しかし、日本の料理は自然のすばらしさ、偉大さを教えてくれて、食事しながら事物に感謝してしまうという何とも哲学的なものとなっているのでは無かろうか。
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食事をする楽しみは、五感を刺激する。味はもちろん、香り、色、手触り舌触りといった触覚、ときとしてはBGMや生演奏などで聴覚も含まれる。つまり人間の感覚を総動員して楽しむのであるが、日本の場合はそこに心の充足という要素が加わる。単に食事をした満足感ということではなく、普段は気づかない自然の豊かさを感じて、それに感謝するという気持ち、「世界はなんと豊かなのだろう、そしてそこに自分はいるのだという感謝の気持ちを持たせてくれて、ああよかったな」という充足感なのである。