【9月14日の朝礼でのスピーチより】

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先日テレビで平田牧場という、ブランド豚を生産している会社が紹介されていました。この会社の新田会長は、それまで販売を委託していたダイエーからあるとき、不当な値引きを要求され一大決心をします。明日からダイエーには一切卸さないというのです。その時点では、販売の大半をダイエーに頼っていたのですから無謀な話です。しかし、ここで腹をくくったために今では独自の流通ルートで自分が決めた価格で製品を売ることができる体制を確立できたのです。

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大変示唆に富んでいる話ですが、まずは別の観点で驚きました。テレビで「ダイエー」と社名を公表していたからです。以前もコールセンターオペレータの労働条件を問題にした番組で大手企業の社名を出していたのでびっくりしました。ダイエーなどはテレビ業界から見ても大得意ですから、気を使って実名を出すのははばかるのがこれまでのマスメディアの態度でしたが、時代が変わったのでしょうか。

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しかし、確かに流通業の世界はえげつないようです。知り合いのビルメンテ会社の社長から聞いた話です。ある大手流通業者の店舗で工事をしていたところ、手違いで電源を切ってしまいアイスボックスのアイスクリームが溶けてしまったそうです。当然、商品にならないので弁償しなければなりませんが、なんと売値で買い取れと言われたそうです。

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流通業では、発注書を交わして納品した後になって値引きを要求するなんて当たり前のことだそうです。先のビルメンテ会社の社長が憤慨しながら言っていました。ある工事を請け負ったとき、発注会社が雇ったガードマンの費用を請求されるそうですが、その金額が世間相場からかけ離れて高いそうです。それでも文句を言えば支払いを引き伸ばされるかもしれませんし、工事の完了報告に対して難癖をつけられるかもしれないので黙っているしかありません。

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ソフトの仕事でも、検収書を担当者に持って行ったときに腰を低くして挨拶に行かないと、何かと理屈をこねて、すんなり判を押してくれないことがあります。自分の立場が上だということで、その力を誇示したくてしようがないというタイプの人ですね。自分のことを認めさせたいがために自分にもできないような厳しい要求を出すというのは、体育会系のクラブで先輩が後輩に指導と称してしごきを行うような心理と同質です。本当に実力のある人はそのようなことはしません。

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話は少しそれますが、取引先からこうした扱いを受けている会社は、今度は自社から仕事を下請けに出すときや、物品を業者から仕入れるときに同じようなふるまいをしがちです。学校で先輩からしごきを受けたので、今度自分が上級生になったときに下級生をいじめるというのと同じです。

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もう20年も前、私が世話になっているお寺で出開帳というイベントを大手スーパーの催し物スペースでやりました。私はお手伝いだったので社員用の通用門から出入りしたのですが、このときの守衛の横柄さには驚きました。なんかやたらと威張っていて、相手が社員だろうが私のような外部の人間(本来ゲストのはず)だろうが、オイコラ口調で迫ってきます。聞くと、年をとった元社員が守衛をやっているそうなので、通用門を利用する人は社員だとしても皆後輩だし、出入り業者であれば下請けと見て、自然と横柄になるのでしょう。この会社では社員が商品を万引きするのを防止するため、ポケットのない制服を着せるそうです。いやな話です。

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流通業には限りませんが、巨大企業が利益を上げる裏には、多くの下請け企業の利益を削って自分の利益を増やしているという側面があります。どこでも手に入るものを売っている会社に対しては、買う側はどうしても買ってやっているという態度になります。そして買い叩いても値引きに応じないなど、相手を気に入らない場合は簡単に他の会社に乗り換えるのです

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色々書きましたが、こうした事例に会社と会社の付き合いというものの本質が表れていると思います。仕事を出す側、金を出す側が相手の生殺与奪を握るという構図、そしてその立場を利して圧力をかけてくるようになるのです。しかしこれは高いところから低いところへ水が流れるように、当然のこととも言えます。これをコンプライアンス上問題だ、下請けいじめだといっても負け犬の遠吠えでしかありません。

(つづく)

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