ゼロベース思考(第3回)
【事例―私のケース】
先週、会社のWebサイトを手直ししていて、少しはまりそうになりました。メニューの部分がグラフィック化されていて、グラフィックソフトFireWorksでボタンを修正したのですが、どうもボタンによって思ったより1ドットずれることがあり、なかなか解決しません。色々と試す選択肢はあるのですが、ちょっと考えなおしてみました。
会社のWebサイトをメンテナンスする本来のテーマ(課題)は次のようになります。
(1)会社のWebサイトを通じて多くの情報をより早く提供すること
(2)利用者にとって使いやすくわかりやすいサイトとすること
(3)SEO上も効果のあるサイトとすること
これらのテーマの中には、「私がFireWorks使いになる」というものは含まれていません。FireWorksやDreamWeaverを使った高度なテクニックを身につけるということは、技術者にとってかなり魅力的なことではあります。しかし、本来のテーマを思い起こすことにより、メニューの部分をグラフィックにする必要性がないのではないかと気がつきました。
多少凝った3D的なボタンを配置するよりも、シンプルにテキストベースで作成した方が、自分のみならず誰にとってもメンテが楽だし、表示速度も若干速いはずです。特にコンテンツのサイズが少ないということは携帯電話やスマートフォンで参照する場合は重要です。小難しい技を駆使して自己満足的な世界に浸るよりも、課題をクリアする近道を探るというのが大切です。
【事例―TVで見たクリエイター】
先日見たテレビで、新進気鋭の日本人クリエイターを特集していました。彼はWeb上で様々な斬新なアイディアを実現し、世界でも注目される売れっ子クリエイターです。その番組で彼のオフィスが紹介されて少し驚きました。そのようなクリエイターならば、オシャレな街にいかにもという格好いいオフィスを構えているのかと思いきや、どこかの雑居ビルの地下の小さな部屋を事務所としていたのです。
番組中からが語ったところによると、打ち合わせをする際は近くの公園へ行ったり喫茶店を会議室代わりにしたりして、あちこち放浪しながら仕事をするのだそうです。そうすることにより、新しいアイディアが浮かぶとのことでした。これなどは、場所や時間をさまざまに変えてミーティングを行うことにより、参加者の気持ちもリフレッシュされて毎回新しい気持ちで会議に臨めるのでしょう。
私が以前勤めていた上場している中堅ソフトハウスでは、色々な定例会議というのに出席させられました。主任会議、リーダー会議、プロジェクト会議、何とか委員会などなど。それらは毎週決まった曜日の決まった時間に同じ会議室で開催されるので、どうしてもマンネリになります。内容も進捗の遅れはだれの責任であるとか、いついつまでに工程表を書き直せだとか、いわゆる物書き的な、官僚的な、文系的な考え方と作業を強制されているようで、まったくクリエイティブな気持ちにはなりませんでした。
またテレビの話ですが、一昨日のNHKで私が子供のころにギャグ漫画家として一世を風靡した赤塚不二夫の特集をやっていて思わず見てしまいました。彼もクリエイターである上に、プロダクション方式でマンガをビジネスにした先駆者です。その彼がやはり漫画のネタ出しの会議として使うのが喫茶店だったり公園だったり、時にはキャバレーへ繰り出してそこでミーティングをしたそうです。
毎週何本もの連載を抱えていると、そのプレッシャーは計りしれませんが、期待通りに常識を覆すギャグを繰り出した裏には、ゼロベースでアイディアを出せる環境を作り出し、常識をひっくり返して世間をあっと言わせてやろうという発想があったからこそ、なのでしょう。