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長い正月休みも終わってみるとあっという間だったと思います。
例年休みになったら「あれもしてこれもして」と意気込みますが、結局雑事に追われて思ったことがたいしてできません。特に私のように小さい子供がいる場合、その世話焼きで終始してしまいます。思っているスピードに対して実際のそれが極度に遅いという、コールタールの海で泳いでいるような感覚です。

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実はこの原稿も家のパソコンで書いているのですが、途中何度も子供に中断させられています。いまも3歳になる下の子から「仕上げはお父さん!」と呼び出されて歯磨きをしてやって戻ったところです。多少イライラしながら歯磨きしたので、やり方が雑になったようで、「痛い痛い」と怒られました。そういえば、先日お会いした慶応大学の教授との会話を思い出します。その方も子持ちでありながらスタンフォードへ留学された経験をお持ちです。周りを見ると皆自分より若く、子持ちの学生などはほとんどいない中、子供の世話をしながら論文を書いているときに、自分は明らかに他の学生よりもハンディを負っていると感じたそうです。しかしだからこそ自分の時間は、他の学生のように自由に時間を使える身分の人に比べて貴重であると考えるようになり、時間を人より有効に有意義に使えるようになったというお話でした。私も新米パパの以前に比べれば、子供の情け容赦ないインタラプトになんとか余裕をもって対応できるようになってきたと思います。そのようなことで、この原稿も多少前後の脈絡がおかしくなってきています。

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自分のことはあまりできなかった正月休みですが、そのような中、以前に購入してそのまま読まずに置きっぱなしとなっていた本のうちの1冊を読めたのが唯一の収穫かもしれません。その本の中で気になった言葉が「岡目八目」。この語の意味は、碁を打つ場面で、対局している本人よりも傍で見ている方が、戦局がよく見えているという意味です。

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人は落ち着いているときはあれこれ冷静にものを考えられますが、ちょっと動揺するとたちまち気持が乱れて平時では考えられないミスを犯したりするものです。会社経営の場合、自分の命が懸っているわけですから色々と判断する際にどうしても雑念が入り、冷静な判断ができなくなりがちです。そんなときに自分をあくまで客観視して、冷静に考えることができるようになれればよいのですが、これが簡単なようでなかなか難しいのです。

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こういう心構えは、イザとなってからあわてて「落ち着け、落ち着け」と自分に言い聞かせても効果はありません。常日頃から冷静にいられる自分を作るように鍛錬しなければかないません。これが「虚心平気」の境地でしょう。その境地にたどりつくために、かつて侍は戦う技術である「剣術」を「剣道」という精神鍛錬のメソッドとして発展させ、それのみならず「茶の湯」や「禅」などを精神の修練の場として重用したのだと思います。「虚心平気」の気構えを獲得しようと努力すること、それはすなわち求道です。

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しかし、会社は組織ですから、上司がその職責ゆえに判断に迷っているとき、そういったしがらみを持たない部下が、傍らから見て冷静なアドバイスをするというのはとても合理的です。経営層にある人が自己啓発し、たくさんの本を読み、座禅を組んだりして自己修養に努め、ある境地に達するまで待つよりも、チームで対処する方が現実的ですね。

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バグの調査では時間との戦いとなりますが、どうしても焦って視野狭窄に陥ります。そんなときはそのプロジェクトに責任を持たない他人の方が、さっとプログラムを見て適切なアドバイスが出せたりするものです。だから、何でも自分で解決しようとするよりも、変なプライドは脇へ置いて相手が先輩だろうと部下だろうと気軽にアドバイスを求めることも大切です。

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元日というのは単なる暦の切れ目ではありますが、昔から1年の計は元旦にありといいます。時間というのは切れ目なく延々と無限につながっているものですが、昔から人はこれに色々な節目を入れて生活にメリハリをつけてきました。

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だから、正月を一つの区切りとして自分の気持ちを切り替えるきっかけにするにはとてもよい機会だと思います。私の今年のキーワードは「虚心平気」ということにいたします。

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「虚心平気」という言葉自体はかなり抽象的ですが、もう少し具体的な表現として私の好きな「六然(りくぜん)」という言葉があります。これは中国の崔銑という人が起源らしいですが、日本では大変好まれて引用されている言葉です。ここに引用して今回の話を終わります。

【六然】

1. 自処超然(じしょちょうぜん)
  自分自信に関してはいっこう物にとらわれないようにする。

2. 処人藹然(しょじんあいぜん)
  人に接して相手を楽しませ心地良くさせる。

3. 有事斬然(ゆうじざんぜん)
  事があるときはぐずぐすしないで活発にやる。

4. 無事澄然(ぶじちょうぜん)
  事なきときは水のように澄んだ気でおる。

5. 得意澹然(とくいたんぜん)
  得意なときは淡々とあっさりしておる。

6. 失意泰然(しついたいぜん)
  失意のときは泰然自若としておる。

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