日本の方向性
そろそろ国として方向性を決めなければならないのではないでしょうか。どこかの属国として生きる、例えばチベットのように名ばかりの自治領を持たせてもらう程度で我慢するのか、これまでの豊かな生活を捨ててでも自存自栄の、小さくともあなどれない国家としてのありようを目指すのか。もちろん、こんな事態が起こるのはまだ当分先で、われわれの次の世代のことかもしれませんが、100年後は確実にやってきます。そのための準備は今のうちにしておいても早いということはありません。
私としては、日本の経団連や、商工会議所などが、われわれは稗粟を食うことになっても構わないから、国の威信を守ってくれというくらいの気概を表してほしいと思います。他国と摩擦が生じるとこの国はすぐに戦争を想起します。国、領土を守ろう、日本の主権を守ろうとかいうとすぐに周りからあの戦争を繰り返す気かと言われます。
もちろん戦争はぜったいに避けなければなりませんが、そのためには戦争というものから目をそらしてはなりません。怖いから見ない、言わない、聞かないという態度では、戦争よりももっと悲惨な結果、例えば他国により自国民が蹂躙され国家が消滅する、という目に逢ってしまいます。
今の日本は、理念(ビジョン)なし、戦略なし、気概なし、そして大切な経済力も失おうとしています。かつて、政治は二流、経済は1流と言われるほど、経済力だけはありましたが、その経済も大きく陰りを見せ今年はついに中国にGDP2位の座を奪われました。このままでは石原知事が言うように日本はいずれ沈没します。
異民族の脅威
卑怯とか、倫理がどうとかいうのは、相手が同じ土俵にあって初めて意味をもつものです。だから、古代は同じ言語を話し同じ宗教を信じ同じ文化を持つ者同士でしか価値観を共有できませんでした。
昔のヨーロッパ人は毎日を恐怖の中で暮らしていたと思います。ある日突然、異民族が攻め込んできて、家族は皆殺し、町は焼き払われるのです。国同士は陸続きですから異民族は簡単に入り込んできます。そして、命乞いをしようが話し合いを求めようがもとから言葉が通じないのですからコミュニケーションが取れません。子どもだけは助けてくれと言っても、宗教も倫理感も違うのでそんな憐れみなど見せることはありません。
だからヨーロッパにしても中国にしても、周りを城砦で防御して自国民を守る城塞都市が発達したのです。日本のようにたまたま周りを海で囲まれたそこそこのサイズの国というのは希有なものです。だからこそ、日本には国家観とか防衛という意識が薄いのかもしれません。
日本にあるもの
日本には資源がないとか、国土が狭いとか言いますが、周りを天然の要害である海で囲まれているというのは、世界的に見てとても恵まれた環境だったことがわかります。中東には石油があり、中国にはレアアースがあり、どこそこには何何が豊富にあり、というニュースを聞くたびに羨ましくなりますが、実は日本には大昔より地政学的に希有な国土を天から与えられていたということに感謝すべきでしょう。
Wikipediaによると、日本の国土の面積は世界ランキングで61位、世界総陸地との割合ではわずか0.25%しかありません。これに対してロシアは1位で11.5%、カナダが2位で6.7%、中国は3位で6.4%です。日本は今、国土のサイズで1位と3位の国から厳しい圧力を受けているのです。ちなみに日本の国土は中国のわずか4%弱です。
しかし、目を海の広さに転じてみましょう。排他的経済水域EEZと領海を合わせた自国の海のサイズでのランキングをみると、日本はなんと世界6位に躍り出ます。中国は15位で日本の2割にも満たないのです。国土の面積を合算しても日本は中国、インドに続き9位で、中国の約半分のサイズとなります。
武力をもっておらず経済的にも陰りの出てきた日本が自国の強みを生かすには、この広大な海を守っていくことが重要で、国としての死活問題です。ですから、たかがちっぽけな島だからといって尖閣諸島などの絶海に浮かぶ島しょに対して無関心でいては大変なことになります。
日本は防衛ラインとなる海に四方を囲まれ、多くの水産資源に恵まれてきたおかげでこれまで国の独立性を保ってきたといえます。
しかし、世界がこれだけグローバル化してくるとその恩恵も相対的に縮小していきます。そして、せっかく先代が文字通り血を流して築いた経済大国としての資産もいまやほぼ食いつぶしてきています。今回の隣国との問題を一つの契機として、この国をどうしていくのかという機運が盛り上がり、国として目を覚ますことが望まれます。