先週読んだ本で、なるほどと思う箇所があったので紹介します。
「ウェブ進化論」というこの本の中に、グーグルの組織マネジメントについて説明している箇所があります。

「戦略の議論、新サービスのアイデアから、日常の相談事や業務報告に至るまで、ほぼすべての情報を社内の誰もが読めるブログに書き込んで公開することにより、すばやく情報の共有を行っている」(抜粋)

グーグルでは社員全員がブログを使って情報を共有することにより、仕事のスピードが著しくアップし、社員のモティベーションも高まるのだそうです。

しかしこれは、わが社でも行っていることですね。そしてその目的はまさにこの本に書かれていることと同一です。私が会社設立以来心がけてきたことは、技術的なものから経営に関することまで、なるべく情報を隠蔽することなく、その情報を必要とする人にも、しない人にも、あまねく伝えるということでした。皆さんの中には、この情報共有はクオーレにおいて当たり前に行っていることから、それが世間一般の常識だと捉えているかもしれませんし、上の人から言われて面倒だなと思いながら週報を掲示板に書いている人もいるかもしれません。私はこれまで、ことさらこの情報共有の大切さについて説明してきませんでしたが、今回はよい機会となりました。

皆さんの中には、私がある案件の受注にあたり、その見積書や得意先からの注文書のコピーを受け取った人がいると思います。なぜそのような文書を手渡すかということは、口で説明するとくどくなるので体で理解して欲しいと思っていましたのであまり説明しませんでした。しかし、私から注文書のコピーを受け取ったときに、その意図についていぶかしく感じていたかもしれませんね。「これを見てどうしろというんだ?」とね。

注文書には、受注金額のほかに開発スケジュール、納品物件や文書番号などが記載されています。これらの中にはそれほど重要ではない情報でありながら、同時に重要な意味を持っているものもあります。例えば、スケジュールですが、現場で作成した本来のスケジュールと、注文書に書かれている至極大雑把なスケジュールとでは、時にまったく違っている場合があります。そのような場合、注文書のスケジュールは全く意味を持ちませんし、開発メンバーはこのスケジュールを気にする必要はありませんので、このような注文書を見せられると返って混乱するかもしれません。しかし、このスケジュールには、発注側の様々な意図が隠されている場合があります。例えばどう考えても仕事が3月には終わらないのに納期が3月になっているとしたら、決算の関係で今期中に支払いをしたいのだなと分かります。

私の意図としては、注文書という生の文書を見ることにより、単に記号化された金額や納期という情報以上の匂いというか、雰囲気を感じ取ってもらいたいのです。しかし一般社員にこのような情報を見せるのは普通の会社ではほとんどないということを知っておいてください。

私が一時期在籍していたソフト会社の例です。ここは社員数百人で当時は株式公開に向けて準備中でしたが、今は上場しています。この会社で私が見積書を作るとします。その見積書は社内でも秘密扱いで、作成者の私のほかには上長にしか見せることができませんでした。あるときこの見積書を机の上におきっぱなしにしていたら、上長の課長から数字を見えるように置くなと注意をされました。また、この見積もりに対する顧客からの注文書は、私でさえ目にすることはできませんでした。しかしこれは一般のソフト会社ではあたりまえのことで、管理者以外のSEやプログラマーたちにとって、自分たちのしている仕事が一体いくらで受注されたものなのか、名目上のスケジュールがどうなっているのかなどはすべて厚いベールの向こうにあるものなのです。

必要があってそのような情報を伝える場合でも、注文書のような1次文書を見せるのではなく、必要最低限のデータだけを抽出して2次的に伝えるに留めるものです。しかし、これでは先に述べたように生々しさが欠けてしまい、その雰囲気が伝わらなくなるのです。

またこのように情報を隠蔽すると、返っておかしな勘繰りが生まれます。私が最初に就職した会社の先輩は、断片的な社長の話などから邪推して、「画面1枚作れば100万円になる、作業工数は2,3日程度のものだから、この商売はボロいもんだ」と周りに吹聴していました。

(長くなったので、続きは次回に)

― 出展 ―
ウェブ進化論 ちくま新書 梅田望夫
  「グーグルの組織マネジメント」
     情報共有こそがスピードとパワーの源泉という思想

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