【2012年1月30日の朝礼でのスピーチより】

とかく今の世の中はスピードが求められます。今はやりのケータイやスマホでも、次々に新しい機種が出てきます。Webやスマホ向けのアプリやソリューションも日々めまぐるしく変わっていきます。そうした中で、我々の仕事は主にこうしたスピードが求められるビジネスを行っているお客様がターゲットですから、当然ながらそうしたお客様のニーズに合わせてスピード感が求められます。

昔はのんびりしていて良かったとか、江戸時代はエコな社会で貧しくても心は豊かだったなどと言うノスタルジックな感情は、プライベートではとても重要かもしれませんが、仕事においてはそのような感傷にふけっている暇はありません。

そのような昔にさかのぼらなくともついこの間、と言っても10年くらい前までの話ですが、その頃は何年もかけて行う開発プロジェクトがあたりまえで、総工数が数千人月という膨大なシステムを構築していました。単価も上がることはあっても下がることはないし、発注元の会社は外注先の新人でも対価を払って受け入れていました。確かに良い時代でした。

しかし、もうそのような時代ではありません。今はスピードとコストがモノをいう世の中です。新人をゆっくり育てるという風潮も残念ながら失われつつあります。そして、品質に関する考え方も変化してきています。

スピードとコストを追求すると、当然ながら品質が犠牲になります。しかし、現代のように進んだITインフラがその品質の劣化部分をかなり補ってくれています。

以前は組み込みソフトにはとても高い品質が求められました。機器と一緒に販売される組み込みソフトは、いったんお客の手に渡るとおいそれとソフトを更新することができませんでした。致命的なバグがあると、その機器を回収して修理する必要があるからです。しかし、今ではユーザは大概ネット環境を持っていますから、かなり手軽にソフトの更新ができます。ユーザが気付かないうちにソフトを更新することすら可能です。

こうしたことは、Webシステムについてはなおさら顕著です。元々ネット環境の中に存在しているWebシステムはシステムの更新が容易であり、システムをリリースしてから客の動向を見てカスタマイズしていくとかバグ改修をするといったことが行われる時代となりました。それどころか、たまにしか発生しないバグなどは故意に放置されることもあります。

Webのデザインについても同様です。多少文章がおかしくてもグラフィックの配置が変でも、まずは情報をUPするということが大事になります。気になる部分は後で時間があるときにちょっとずつ直せばよいという考え方が、一般のユーザに浸透してきているように思います。

このあたりは紙物のDTPデザイン一筋にやってきた人にはなかなか文化的に受け入れられないようですが、受け入れなければ生き残れません。それを拒否してひたすら良いものを高コストで時間をかけてやりますという職人さんは、1年を通じて仕事の依頼が一件も来ない西陣織の人間国宝のようなものです。

あえて極端な言い方をしていますが、我々の仕事は今や牛丼屋のようなもので、安い、早い、うまい、が必須条件となってきています。ただし、この「うまい」はあくまで料金に見合った、そこそこの「うまさ」です。

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