【2011年12月12日の朝礼でのスピーチより】

IT企業がサーバ設備を持つことにおいては、クラウドサービスにより所有するコストがなくなりつつあります。極端な話、あるサービスをクラウドで提供していても利用者が0ならばコストは0です。

 

しかしそのサービスが爆発的にヒットして100万ユーザを獲得したとします。従来ならより容量の大きなサーバ設備に乗り換えなければいけないところをそのまま何もしなくても100万ユーザを取りこぼすことなく受け入れることができるのです。もちろん、その分増えた利用料金を支払うことにはなりますが、売り上げも増大しているので原資の心配はいりません。

 

アメリカでビジネスを始めてうまくいった企業は似たようなシチュエーションで成長してきた例が多くあります。最初はHPやAppleのように裏庭やガレージでビジネスを始めます。コストはほとんど0円です。そしてある程度顧客が付いてくると近くの牧場や草原をただ同然で借りて平屋の事務所を作ります。

 

そのような地域には駅などありませんが、向こうはもともと車社会なので従業員は皆車で通ってきます。日本なら駐車場代が気になりますが、あちらはただ同然の土地なのでコストはかかりません。

 

そうしてある程度事業規模が大きくなると、その平屋建てのオフィスを横方向に拡大していきます。日本のように土地が少ないとビルを建て替えるとか借り換えするしかありませんが、向こうの場合は、これまで利用していた事務所の隣、元々砂漠や牧場だったような土地を買い増しして、これまでの事務所につなげて横方向に建物を継ぎ足していけば良いのです。

 

わざわざ多額の費用と数年という長い工期をかけて高層ビルなどを作らなくとも、平屋かせいぜい2階建てのすぐに建てられてコストの安い建築物を増築していけば事は足りるのです。このことが、日本に比べて米国企業の成長スピードが速い一因となっているはずです。

 

日本には残念なことにそのような物理的な土地がありません。オフィスは大手町、銀座、渋谷、池袋といったアクセスの良い駅から歩いて10分程度のところが好まれます。北海道や九州で起業して世界企業になった会社がどれほどあるでしょうか。

 

しかし、インターネットサービスのようなバーチャルの世界では、こうした物理的な土地の制約から解放されることになります。最初は月500円のサーバ利用料で始めて、それがあっという間に月10億円の売り上げをあげるサービスにシームレスに拡大していくことも可能となりつつあるのです。

 

製造業の例でいうと、受注の多いときは工作機械を5台借りて、受注が減れば1台に減らすということと同じですが、実際はそんなに簡単にはいきません。特殊な工作機械がいつでも欲しいときに配達してもらえるなどということはありませんし、何10トンもある機械を運ぶための運賃も膨大で、校正など据え付けにかかる費用を考えると現実的ではありません。

 

そう考えるとバーチャルの世界は可能性があります。特に日本のように限られた国土で暮らし、様々な法規制など(武器製造もできないとか)制約が大きい国にとっては、グローバルな競争力を保つにはこの分野しかないのかも知れないと感じるこの頃です。

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