先日、大学生の娘からこんな相談をされました。「バイト先の店長からLineが来て、今日は出勤が遅くなるから代わりにタイムカードを押しておいて、と頼まれたけれどどうしようか迷っている。」という話でした。
私は、「本人から頼まれたとしても、他人のタイムカードを身代わりで押すのは違法行為だよ」と教えたので、娘はきちんとこの店長に拒否するとの連絡をしました。

この時思い出したのは私が社会人2年目のことです。仕事で先輩社員と二人で新潟に数か月出張していたときの旅費精算のことです。旅費精算は毎月行うことになっていましたが、最初の時に書き方がわからない私にその先輩は自分の旅費精算書を見せて同じように記載するようにと言ってきました。するとおかしなことに、その月の週末は1度しか帰宅していないのに毎週末帰宅したことになっていて、新潟から東京までの新幹線代を含む交通費が計上されていました。遠方への出張の時は週末も現地に滞在するのが普通で、帰宅するのは月に1回くらいでした。なお、週末を現地で過ごすと1泊6,000円の宿泊費だけ支給されます。土曜に帰宅して日曜に戻ると東京から新潟の往復交通費は、帰宅しなかった場合の土曜日1泊の宿泊費6,0000円を大きく上回りますから水増し請求となります。

先輩にこれでいいんですか?と聞くと「ええねん、ええねん」という回答。現場にいる社員はこの先輩と私の二人だけなので他に聞く人もおらず、「そういう習慣か」と思って指示された通りの精算書を社長に提出しました。私の会社は本社が京都で東京には拠点が無かったので、月1回くらい社長が上京して来て事務処理をするという形でした。

ちなみに出向先では私の仕事に対する評判はすこぶる良くて、月末に提出する勤務表の残業時間に対して元請けの担当者は「阿部さんは仕事できてるからもう10時間増やしておいて」と言われたことが何度もありました。客観的に見ても、経験2年目で新潟県の浄水場システムを仕様決めから実装までリーダーとしてやっていたので、元請けからすれば残業代の上乗せくらい安いものだったのでしょう。

政治資金収支報告書の問題も似た話かもしれません。責任は指示通りに対応した下っ端より、そういった習慣にしてしまったトップにあると思います。

さてそれから数か月後、東京に戻っていた私に社長がやってきて嫌味っぽく、こういいました。「阿部君なあ、毎週毎週帰ってくるいうんは行儀悪いんちゃうか?」私は関西弁のニュアンスが良く分からず何で「行儀」が悪いと非難されるのか心外に思い、「いや、毎週は戻ってきていません、帰ってきたのは1回だけです」と答えると社長の顔色が変わり、いきさつを追及されて最後に「これは犯罪です」と言って去っていきました。その後、社長はその先輩を懲戒処分にして私にも始末書を出すように命じました。まあ採用して1日目から出向先に放り込んで何の教育も説明もせずに放置しておいて、上長の指示に従っただけなのに始末書も何もないもんですが「違法と言われればそうでしょうな」ということで仕方ありません。

ここで皆さんにお伝えしたいのは「相談」をすることの大切さです。冒頭の娘の事例でも、親である私に相談したから正しい対処ができたわけです。皆さんも何事につけ、親や兄弟親類に相談する、友人に相談する、仕事においては同僚や先輩に相談する、ということを心がけてください。あの大谷選手だって、通訳以外に相談できる相手がいれば問題が大きくなる前に対処できたかもしれません。相談できる相手がいないなら相談できる相手を作る努力をしてください。

今日入社された皆さんは、私の時と違って同僚や先輩、マネージャー、研修をしてくれる講師などがいます。そして必要なら私に直接相談してもらっても構いません。

仮に変な話を持ち掛けられたら「考える時間をください」といってその場から逃げることも大事です。そのあとでしかるべき人に相談することで、結果としてご本人も周りの人も被害を最小限にとどめることができるでしょう。また、ぎりぎりになってにっちもさっちも行かなくなってから相談するのではなく、早めに相談することも大事です。

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