【2010年3月8日の朝礼でのスピーチより】
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1月のある日、今年になって初めて東邦医大へ行った。この病院へは、不整脈に効く漢方薬を処方してもらうために定期的に通っており、すでに3年くらいになる。当初は毎月通っていたが、最近は2カ月に一回のペースとなっている。
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いつものように診療室に入り先生から問診を受ける。特に変わったこともないので5分くらいのやりとりである。その間、先生はパソコン上でカルテの画面を表
示して患者の話を聞きながらデータを打ち込んでいく。いまどきの先生はパソコンの操作もできなければならない。以前にこの病院で高齢の先生の診察を受けた
時、先生が傍らにいる看護師にいちいち操作方法を聞きながら一生懸命入力していたのを見て、病院の仕組みをシステム化するのもいいが、一律でキーボード入
力を強いるのもいかがなものかと思ったことがあった。
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今の主治医の先生は私よりも若く、きっと学生のころからパソコンに親しんでいたのであろう、いつも手際よく操作をしている。画面を盗み見るとウィンドウの
タイトルバーにNepXXXXとやらの文字が見える。私がパソコン上に視線をやっているのに気づいたのか、病院のシステムの話題になる。
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この先生が以前に勤めていた病院では、A社のシステムを利用していたらしいが、今の病院ではB社のものを使っているという。A社のシステムはデータ入力の途中で落ちてしまうことがあり大変だったらしいが、今のシステムはそのようなことはなく、とても快適だという。
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なるほど、昔、電子カルテの導入が盛んだったころ、国の補助金を追い風にずいぶん導入が進んだようだが、そうした政策がらみのシステム導入だとシステムそのものがまだ枯れておらず、いろいろと不具合もあったのだろうなと想像がつく。
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診療を終えて自動精算機に向かうと、機械が入れ替わっていた。それまでは次回の予約票と領収書が二回に分けて出てくるので少し時間がかかったが、今度のは
予約票と領収書が一枚の紙に印刷されて出てくるので待ち時間が少ない。以前は、最初に領収書が出てきた後、「引き続き領収書が印刷されるのでしばらくお待
ちください」というメッセージが画面に表示された。人間の心理として、紙が一枚出てきたらそれで操作は終了したと考えがちであり、そのまま予約票を受け取
らずに立ち去ってしまう人が多かったのかもしれない。私がこうしたシステムを設計するとしたら、やはり一回で済ませる方向で考えたであろう。
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この年末年始を挟んで東邦医大の自動精算システムはリプレースされたらしい。患者からすると待ち時間が短縮され便利になったのでめでたしである。しかし、
新しい自動精算機に慣れていない患者が多いので、病院の職員が2、3人つきっきりで操作の補助をしている。新しいシステムに切り替えて使い勝手が良くなる
としても、運用が追いつくまでしばらくこうしたイニシャルコストがかかるのは痛しかゆしである。こういうことがあるので、現状よりも良いシステムがあって
もなかなか乗り換えるという判断を下すのは難しいが、あえてそれにトライした姿勢は立派である。それに比べて...
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公共のシステムというのはなかなか思うように改善されない。住基ネットにしてもいまだにまともに運用できていないし、「パスポート電子申請」もほとんど利
用されないまま停止となった。今でこそETCの利用は80%と一般的になったが、そうなるまでに10年もかかっている。対してシンガポールでは日本の技術
を導入してあっという間に普及させてしまった。日本の行政の、変化に対する感度の鈍さとのろさは恐竜並みではないだろうか、世界の政治、経済は急激に変化
しているのに、このようなことでは本当に絶滅してしまう。私が最近痛感しているのはハローワークの非効率的な運用である。(次回に続く)