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冒頭に元米IMB会長ルイス・ガースナー氏がビジネススクールについて語った言葉を紹介します。
「ここ(ハーバードビジネススクール)で学ぶ最も重要なことは、状況がはっきりしないまま、限られた情報と限られた時間の中で、いかに事態を分析し、判断を下すかということだ」
― 2002年11月9日 日経新聞 私の履歴書)より ―
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ロジカル問題解決(著:津田久資)という本を読みました。この本では問題解決の重要な心構えとして、限られた情報をもとに、ベストの解決策を導き出すマインドとして「結論志向」を挙げています。洋の東西、時代を問わずリーダーとして普遍的に必要とされる資質といえるでしょう。
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しかしながら日本の現状について著者は「とかく日本のビジネスマンは、ベストの解決策を導き出すためには、まずは情報を完全に収集しなければならないと考えがちのように見受けられます。」と述べています。日本人の多くは「結論志向」ではなく「完全情報志向」であるというのです。
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著者自身も米国の大学(おそらくバークレー校)のMBAに入学した当初は、ケーススタディの調査で、「このような不完全な情報では何もいえない、もっと情報が必要だ」という回答をしてしまったそうで、当時の自身を振り返り典型的な日本人のパターンを露呈していたと語っております。
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これと同様の話を元マッキンゼーのコンサルタント、大前研一氏が述べていました。氏のMIT(マサチューセッツ工科大学)留学時代の話です。教授に質問されたので「ちょっと図書館で調べてきます」と答えたら、教授は大前氏にチョークを投げつけてこう言ったそうです。「なぜ図書館なんだ! この問題を私とキミが解決できなかったら、世界中の誰が解決できる? ここは天下のMITだぞ。図書館に答えがあるような問題に取り組む場所じゃない。」
― 「PRESIDENT 2008.5.5 大前研一の日本のカラクリ」より抜粋 ―
日本人が全て「完全情報志向」なのかどうかは分かりません。私には外国への留学経験もなければ外国人ビジネスマンと仕事をしたこともないので想像を働かすしかありません。しかし、上記の二人の話からなるほどと思う点があります。
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日本人はコツコツとものを積み上げていく作業が好きな性質を持っているような気がします。そういった性質が製造技術に生かされ、高品質な製品を生み出しているという側面から、それが悪いこととはいえませんが、デメリットとして働く場面もあるようです。たとえば航空機産業などはよい例です。最近ようやくMRJという国産ジェット旅客機の開発に乗り出した日本ですが、この国の製造技術の高さを考えると他国に比べて非常に出遅れたなという感じを否めません。
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すでに大手航空機メーカーの下請けとして、複合材料をはじめとして様々な部品を供給し、旅客機の1/3から1/2は日本の製品であるといわれます。しかし、旅客機を1機丸ごと製造するには至っていません。航空機産業にはそれをビジネスとして成り立たせるための長期戦略が必要で、国際的な営業力および政治力、サプライチェーンを構成する能力、プロジェクトを管理遂行する能力、長い年月にわたり安定して保守サービスを実施する能力などが必要であり、ただ単に部品を作る技術だけでは、まったくもって足りないのです。
(後半は次週へつづく)