□□□□
十代の反逆といえば、ジェームズディーンやRolling Stonesなど思い浮かぶが、それらはあくまで作られたイメージである。自分で苦労することを避けて生きていながら、俺は十代の純粋な気持ちを持ち続けるんだ、とか、Stonesのように自分の生き方を貫きとおしたいんだ、などと思っている万年青年には、早く目を覚ましてもらいたい。他者を模倣したり、その人になりきって世の中を批判したりするのは至極簡単なことである。しかし、批判と反骨精神は違うのだ。

□□□■
人は成長すると知恵がつく、すると、それまで自分を支配していた力に対して疑問を感じるようになる。ほんとに親の言うことが正しいのだろうか、社長の言うとおりにしていてよいのだろうか。やがてそうした相手に対して批判するようになる。それ自体は大いに結構だし、自分もそうして生きてきた。しかし、批判するだけで終わってしまってはただの万年野党である。

□□■□
日本の戦後の政治は、長く自民党と社会党という2つの対立図式で成り立ってきた。資本主義、民主主義を掲げる政権与党の自民党に対し、どこまで本気かわからない社会主義を目指す社会党。しかし、社会党には本当に政権を奪おうという気概などはなかったのである。与党の言うことする事にいちいち反対を唱えていただけである。こうした社会党のメンタリティーは、必ず批判する相手を必要とする。そしてその相手は自分よりも強いものでなければならない。

□□■■
自分たちは弱者であり、強者に搾取され、被害者であるという立ち位置が絶対に必要なのである。だからこそ自分たちには批判する権利があると主張するわけだ。そして、大きな目的もコミットメントもないまま、批判することだけを自分たちの仕事にしまうので、万年野党となってしまうのだ。「被害者」で居続けるということは大変居心地がよいのかも知れないが、同時にとても卑怯である。確かニーチェもそのようなことを言っていた。

□■□□
さて、こうした考え方は政党に限らず、個人の中にもそうした性向が見受けられる。会社ではたいして働きもしないしリーダーシップもとらないのに、なんだか妙に歴史や政治経済に詳しくてエラそうに会社や上司を批判するのである。さっきまでの話とイメージがダブらないだろうか? そう、こうした人々は、まだ自分の反抗期を完了していないのである。反抗する、批判するということ自体が自分の存在意義となってしまった同情すべき人、それが先に述べた万年青年である。

□■□■
反骨精神とは何だろうか。自分の考えに合わないことには断固闘う、一人になっても反対し続ける、といったイメージを挙げる人が多いだろうが、大切なのは、ただ批判するだけではないということだ。自分の理想を信じて行動し続ける。自分が批判される立場に立つことをいとわない。場合によっては自分が加害者とそしられることも恐れないという点で、ただ弱者の立場を利用して批判するだけというメンタリティーとは大いに異なるのだ。

□■■□
また、批判することを自分のアイデンティティーとしているような人は、逆に自分が批判される立場に立つと瞬く間に墜落する。人を「疑惑の総合商社」などと揶揄した社民党の女性議員がよい例である。そうした人は自分が批判されることを恐れるあまり、なお一層攻撃性を前面に押し出すのではないだろうか。

□■■■
若くて、頭が切れて、鋭い言葉で世の中や大人を切り捨てる、そんな姿は一見かっこよく映るかも知れないが、私が本当に格好いいと思うのは、年老いてボロボロになっても自分の道を歩き続ける人である。批判されても馬鹿にされても、何くそ、今に見ていろと自分の目標のために努力し続ける人である。

■□□□
若くして死んでしまったロックスター、その中には本当に不慮の事故や災害で亡くなってしまった人もいるが、若い時にさんざん好き放題やってスターになりながらも、やがて自分自身がかつては無様だと思っていた30過ぎのおっさんになることに耐えられず、30歳前に自暴自棄な生活をして死んでしまった人も多くいる。そんな姿を格好いいと思うティーンエイジャーの気持ちもわからなくはないが、それよりも60歳過ぎても現役でやり続けているSones、The Who、Iggy Popといった永遠の不良親父の方が私からみるとずっと渋くて格好いいのである。(もっとも、彼ら自身もたまたま生き残っただけかも知れないが)

■□□■
ロックの話ついでに

ロック魂というのはそれぞれの人の解釈によって違うだろうが、反骨精神という要素を含んでいることに間違いはないだろう。Rock And Roll Heartという曲も書いた私の好きなLou Reedに言わせると、ロックンロールハートとは、群れない、権力が嫌い、学校が嫌いということらしい。

かつて10年以上ロックバンドをやってきた私にもロック魂のかけらが多少なりともあるのかもしれない。そして今の会社を作って20年近くになるが、この会社は私のロック魂の一つの具現化したものである。それは傷だらけでみすぼらしいちっぽけなものかもしれないが、とりもなおさず自分の反骨精神つまりRock And Roll Heartが生んだものである。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

上部へスクロール