【2012年2月13日の朝礼でのスピーチより】
ソフト受託開発やSES案件を生業としていると、そのときの自分たちのリソースに合わない仕事つまり、人的余裕のないときに案件が飛び込んでくることがあります。
長い営業活動の末、ようやく契約できそうだというところまでこぎつけたのに、納期に間に合わせるためには自社の要員が足りないので、せっかくの案件を断らざるを得ないというのは、まさに断腸の思いです。
受託開発やSESというのは、基本的に「お仕事ください」的な営業スタイルなので、お客がこの日から始めてくれと言わればそれに従わなければならないし、この日までに仕上げてくれと言われれば、徹夜してでもやり通すというのが当たり前のことです。
話は変わりますが、町にはよく行列のできる店があります。人気のラーメン屋では、並んでいるお客は混んでいるからといって別の店に行こうとはしません。これが、ペットボトルのお茶を買いに来たお客ならどうでしょうか。コンビニが混んでいて30分も待たされるというのにわざわざその店のレジに並ぶことはないでしょう。さっさと別の店に行きます。
ラーメンとお茶、どちらもたいした違いはないように思えますが、ペットボトルのお茶はどこの店で買っても味は同じですし、値段もほぼ同じです。対して、ラーメンはやはりその店独特の味というものがあり、店の雰囲気も千差万別。だから、気に入った店やおいしいと評判の店には並んででも食べたいと、お客が殺到します。
しかし、ラーメン屋は開店前に客が並んでいても時間になるまで店は開けませんし、営業時間が過ぎたら「すみません、もう閉店時間です」といって店を閉めてしまいます。それどころか、スープが無くなった時点で店を閉めてしまう店もあります。見方によっては、お客をないがしろにしているようにも思えますが、それでトラブルになることはありません。
お茶のようにどこの店で買っても同じ商品をコモディティ商品と言います。お客は、欲しいときにその商品を買える店で買います。特定の店が気に入ってそこでしか買わないということはありません。最近はやりのポイントシステムは、こうしたコモディティ商品を特定の店で買わせるための戦術です。
受託開発やSESというのもかなりコモディティ化しています。発注元が調達先の会社にJava技術者が欲しいと打診した時に該当する要員がいないときには、発注元は別の会社に声をかけます。まれに、ある技術者が特に気に入られていて、その人じゃなきゃダメだから半年先でも待ちますということもあります。しかしそれは極めてまれなことでしょう。
会社の経営上は、お客様が列を作って待っていてくれるような状態を作ることが望ましいのです。忙しいときにはこちらの都合で「申し訳ありませんが1か月先まで予定は埋まっていますので、その後でならお引き受けします」と言って、お客様が「わかりました、それでは待たせてもらいます」と言ってくれるような関係です。
値段も同じです。初めから、この商品は●●円です。と値付けしておくとそれに対して値切られることはないでしょう。SESの場合、「経験5年のJava技術者」などというリクエストなので、そういう条件にあてはまる人はたくさんいます。だから、よそはおたくより安い価格を提示しているからもっと負けてくれ。という話になります。市場原理です。
しかし、その商品がそこでしか買えないものであれば、お客様は設定されている値段で買うしかありません。多少の値引き交渉はあったとしても、それはあくまで設定されている価格をベースに行われます。あくまで価格設定の主導権は商品の提供側にあります。
我々が目指すのは、コモディティ化からの脱却です。うちにしかないユニークな商品、サービスを提供することが、競争に勝ち残る手段なのです。