【2011年12月26日の朝礼でのスピーチより】
私が社外取締役となっている滋賀県の会社の忘年会に先日も行ってきました。
忘年会場は滋賀県甲賀市水口町というところで、東京に住んでいると全く聞いたこともない地名ですが、東海道(今の国道1号線)に面した街道沿いでかつては甲賀忍者が活躍したようです。
ここ数年、いつもこの場所で忘年会をするので年に1回訪れるのですが、今年はその1号線沿いの変わりように驚きました。
以前は国道沿いにずっと農地ばかりが広がっていて、高台の向こうにはせいぜい工業団地のようなものしかなかったのですが、今年行ってみるとその国道沿いにありとあらゆる商業施設が立ち並んでいました。
衣料品、ホームセンター、家電、外食チェーンなど、よくもこれだけ集まったなというくらいにひしめいていました。甲賀市は旧甲賀郡の旧水口町、旧甲南町、旧甲賀町、旧土山町、旧信楽町合併してできた市で、人口は9万人です。ちなみに大田区は70万人です。
東京から見ると人口9万人というのはさほどの規模ではありませんが、そこに急激に商業施設が増えているのです。逆の現象として、これまでにぎわっていた北海道の苫小牧や帯広が見る影もなくさびれているのとは対照的です。
東京に住んでいると気づかないことが色々とあります。私のように時々地方に出かけるとその変化や東京との違いがよくわかるのですが、ずっと東京にいるときっとそのようなことは分からないでしょう。
見えてくるのは、我々の住んでいる東京は特殊な街だということです。ここではすべてがずっと飽和状態で成り立っていました。何か新しいものができるときには、まず古い物を壊してそこに新しいものが出来上がります。
それに対して地方では、それまで何もなかったところに忽然とものが出来上がります。あるいは、忽然とものが姿を消します。発展する伸び城も大きい反面、廃れていくと何にもなくなってしまいます。
日本の経済はかなり先細りというか閉塞感に覆われていますが、発展している地方都市があるのも事実です。東京に住んでいると気づきませんが、日本にはまだまだそうした可能性があります。
東京に住んでいると、なぜ家電量販店がこんなに台頭してきたのか理解できません。近所のゆうめん家電量販店に出かけても、平日は結構人気がなくて、こんな調子ならすぐに撤退するのではないかと思わされます。
しかし、家電量販店は狭い東京の都市部だけをマーケットとしているのではなく、全国にたくさんある人口5万、10万人という商圏でこそ発展してきているのだと思います。そうして全国区を勝ち抜いてきた会社が最終的に東京という狭い首都で攻防戦を繰り広げているのでしょう。
すべての道はローマに通ずという言葉がありますが、今の日本では情報、物、金、人、すべてが東京に集中するような流れがありました。だから、東京にいるとすべてのフロント部分を見ることができますが、反対にその根っこを見ることができません。
これからは、東京一極集中ではなく地方の時代だと思います。昔は「花の都」東京に出るのに汽車に1日乗らないとたどり着けなかったのが、今では新幹線や飛行機でアッという間に行くことができます。
田舎暮らしというと何だか情報や流行に取り残されるというイメージがありましたが、今では物流も通信インフラも整い、都会に出なくてもリアルタイムに新しい情報に触れることができます。普段は地価も物価も安くてゆったりした街に暮らし、必要があれば都市部に出かけていくという生活でも全く支障がないという時代になるでしょう。