【2011年7月11日の朝礼でのスピーチより】
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ビジネスニュース番組、WBSの「エネルギー再興 第2回原発コストは安いのか」を見て感じたことです。
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報道によると六ヶ所村の一人当たり村民所得は1363万円だそうです。これは全国平均の5倍です。番組ではテーマが別のポイントだったのか、さらりと流されたのでうっかりすると見逃してしまうデータでしたが、驚くほど高額です。
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もちろん多額の補助金があってのことでしょう。この金額は場所が青森ということを考慮するともっと価値の高いものになります。東京に住む生活コストと青森とでは大違いだからです。ネットで調べても六ヶ所村の不動産物件というのは見つかりませんでしたが、弘前では2LDKのマンションの家賃が6万円程度ということがわかりました。東京とは2倍以上の差があるわけです。
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生活コストが2倍違うと仮定すると所得は東京での約3,000万円に相当します。3,000万円というと、ちょっとした開業医でも最近はここまで行くのは難しい金額です。であるのに、村人全員の平均がこの金額です、このような地が日本にあるとはにわかには信じられません。ただし、ここでいう村民所得というのは個人所得ではなくて村全体の企業所得も含めた金額です。しかし、村には全戸にテレビ電話が引かれたり立派なコンサートホールがあったりと、何らかの形で住民に還元されているわけです。
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六ヶ所村の人口は約1万1000人で、村内の総生産額は3647億円。青森県内には、人口約30万人の青森市の総生産が1兆200億円、人口約10万人の八戸市が8900億円ということですから、六ヶ所村の数値が飛びぬけていることがわかります。ちなみに隣の野辺地町の一人当たり町民所得は214万円で六ヶ所村の1/6だそうです。(SAPIO 1022.8.3より)
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話は変わりますが、一般に情報の質というものを考えると、国、政府が発表する情報が1次情報、大手マスコミが2次情報、と捉えるのが一般的ですが、その一次情報が何らかの恣意によって偏向した内容を伝えるならば国民は正しい判断をすることができません。
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しかるに、平成22年の政府の「エネルギー基本計画」では発電コストとして、1KW/Hあたり石油が10.7円、石炭15.7円、原子力5.3円となっています。これだけを見ると、石油や天然ガスはロシアや中東の思惑で価格や供給が不安定となるので、多少のリスクはあっても原子力発電が自国に資源を持たない日本にとって唯一の選択肢と思ってしまうのが当然です。
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ところが番組の中では、こうした政府の発表に疑問を持った立命館大学の大島堅一教授が調査した結果、政府発表の原発コストには以下の2つが算出根拠に含まれていないことが明らかになったそうです。
・揚水発電のコスト
・自治体への補助金や原子力技術開発など年間4,000億円の費用
この教授の試算では
・水力:7.26(11.9)円
・火力:9.9(10.7)円
・原子力:12.23(5.3)円
※カッコ内は経産省の試算
しかもこの原子力発電のコストには使用済み核燃料の処理費用が入っていないし、今回の災害での保障費用ももちろん含まれていません。
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原発廃止の是非をここで言うつもりはありませんが、まずは正しい情報をベースにしないと議論ができません。この「エネルギー基本計画」を見ると、「安いんだからこれでいいだろう」という国民に対する子供だましな情報操作と感じます。
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マスコミも偏向した情報発信が批判されますが、マスコミ報道というのはあくまで営利企業による二次情報です。しかし肝心の国が発表する一次情報がこれでは、何をよりどころに議論するのかその立脚点がぐらついているのが現状です。
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意思決定のためにはコストとリスクのアセスメントが必要です。妥当な情報があって初めて自分たちが責任を負える判断ができるのです。もともとの情報が捻じ曲げられたものであるとき、それを信じて判断を下した国民は「だまされた」という被害者意識をもち、結局その判断をしたことを自分たちの責任として捕らえず、第三者のせいにしてしまいます。
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直近でよい例があります。民主党がマニュフェストを発表し、財政の無駄を排除すれば子供手当てくらいは簡単に捻出できるなどと吹聴して国民の支持を取り付けて政権交代を起こさせました。しかし、結果は「うっそぴょーん」というような軽い冗談だったようです。
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先の大戦では、敗色濃厚な戦局の中でも、「日本海軍・陸軍は向かうところ敵なし、今日も○×の戦闘で大いなる戦果をあげました」というような報道をしました。しかしそれはあくまで限定された地域での限定された都合の良い範囲での戦果報告でした。たとえば、ある海戦で大敗を喫したのにもかかわらず、「敵戦艦1隻撃沈、2隻大破、それに対するわが軍の被害は巡洋艦1隻小破」などと報じたのです。それは、その海戦での特定の海域に絞った情報だったりします。全体としては大負けだったのに、たまたま敵にダメージを与えた戦闘だけを大きく取り上げていたにすぎないのです。これはオリンピックやワールドカップの報道にも共通していますね。聞いているほうが恥ずかしくなります。
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これまで国民は大本営発表などに象徴されるように軍部指導部にだまされてきたという被害者意識を持っています。それが戦後ずっとトラウマとなっています。「やっぱりアメリカは自由の国だった。国民は被害者だ。戦前は暗黒の時代だった」というような被害者意識と持つことになってしまいました。このような被害者意識を持つということは、自分たちが被害者であるという大義名分があるということ。そして過去の判断が誤った情報により誘導されたもので、自分たちに非はなかったという言い訳につながっています。
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先日収監されたホリエモンですが、罪状は誤った決算報告、経営内容の報告をしたために多くの株主を欺いたというものです。本当にそうなのかどうかはよくわかりませんが、会社側が自分たちに都合の良い情報だけを発信したことにより、多くの投資家たちにその判断を誤らせたというのが損をした投資家たちの大義名分です。しかし、これらの投資家の多くは仮に会社が正しい経営内容を報告していたとしてもその株を使って儲けようとしていたのではなかったでしょうか。
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この国では、報告する側もそれを受け止める側も、いまだに大本営発表の体質から脱却していないように感じます。