内定ということで来春からの入社になるわけですが、あと5カ月しかないので色々と気ぜわしいと思います。とくに、実家から通える人はさほど生活に違いはないかもしれませんが、就職を機に家を出て生活をするというのは、どこに住もうか、やれ賃貸契約だ、やれ引越しだ、とやることが色々ある上に年末年始もあるのであっという間に4月になってしまうことと思います。
住み慣れた町を離れて見知らぬ土地で暮らすということには、様々な思いを持つことでしょう。
そこには慣れ親しんだ人やコミュニティーとの別れに伴う寂しさ、新しい生活に対する不安などが胸にあふれてくることと思います。
私も中学を卒業したタイミングで生まれ故郷の東京を後にして滋賀県大津市という見知らぬ土地で親とも離れて生活していくという体験を持っておりますので、よくわかります。しかし新しい生活に対する期待もあるでしょう。大都会東京で暮らすとういうのは刺激的な事でもあります。特に若い人にとってはなおさらでしょう。
シェークスピアのロミオとジュリエットのセリフで”parting is such sweet sorrow”というのがあります。これは、「別れとは何とも甘く切ない」という意味です。私はこの言葉をロミオとジュリエットからではなく、「荒野の決闘」という西部劇映画のワンシーンで印象に残ったので覚えているわけです。
解釈は色々ありますが私は、別れというのはただ辛いだけではなく、人生を豊かに彩る味わいを残してくれるものだ、という意味合いだと思います。
よく「別れがあるから出会いがある」ともいいますよね。
人生における楽しみというのは、短絡的に考えると欲しいものを買ったり、食べたいものを食べたり、おしゃれな服を着たり旅行に出かけたりというものがあります。反対に苦しみとしては今話した別れであるとか、経済的な不遇、健康上の問題、つまり病気やケガに見舞われる、などということがあります。
しかし、「別れ」という一般的にはつらくて、できれば経験したくないと思われる苦しみが「甘く切ない」という風に捉えられるのであれば、貧乏や病気についても数年も経てば話のネタになりますし、一つの思い出になったります。
喜劇王チャップリンは「人生は近くで見ると悲劇だが遠くから見れば喜劇である」と言っています。人生の苦難にのたうち回っている人を遠くから見ていると面白い、つまり、人の苦難を映画というスクリーンを通して遠くから観客として観ていると娯楽になるわけです。ダイハードという映画がありますが、主人公にこれでもかと苦難が押し寄せて葛藤・格闘しているさまを観客としては楽しむわけです。
同様に、自分の人生に起きた苦しい体験も、時間がたってから思い返す、これは「遠くから見る」というのと同じです、そうするとそれが人生の情味として記憶され、後から思い返すと滑稽だったなと笑い話にできるということですな。
中島みゆきの「時代」にも、「あんな時代もあったねときっと笑って話せるわ」という歌詞がありますね。
とにかく、生きていく中で誰にでも困難は降りかかりますが、それを楽しんで遠くから見ているもう一人の自分を心の中に置いておく、ということが人生の苦難にやっつけられずに済むひとつの方法かと思います。以上、人生のネクストチャプターに進んでいく人への送る言葉といたします。