今年もあっという間に8月になり夏本番ですね。すでに連日の猛暑に加え、突然の豪雨によりあちこちで被害も出ているようですから気を付けたいものです。先週から始まったオリンピックでその方面のニュースばかりが報道されていますが、来週6日は広島、9日は長崎の原爆の日、そして8月15日は終戦の日を迎えます。

今の日本には戦争体験を持つ人はほとんどいなくなり、戦争はすでに古い記憶となっています。若い人の中には日本とアメリカが戦争をしたということすら知らない人がいるらしいですね。
私が子供のころはまだ周りに戦争体験を持つ人が大勢いて普段から戦争というものの残り香のようなものに包まれていたように思います。私の父も戦闘には参加しませんでしたが戦車兵として富士山麓で訓練を受けていたという話をよく聞いたものです。

父の実家は樺太でしたので終戦を迎え軍務から解放され故郷に戻ろうとしましたがそこは既にソ連に占領されておりました。北海道のたぶん稚内港で樺太(大泊)へ行く船はないかと港の人に聞くと「占領されているんだから船なんか出るわけないだろう」と冷たく言われて呆然とそこにたたずんでいたと話していました。その後、家族は引き上げ船で北海道に逃れてきましたが、妹の一人(叔母)はその船の中で亡くなったそうです。

私がまだ5歳くらいのころ、近所の友達の家に遊びに行くと、そこの家のじいちゃんが地球儀を引っ張り出してきて、中国の東側を指でなぞりながら「このあたりまで日本だったんだけど取られちまった」と私たち子ども相手に悔しそうに話していました。これは満州国の話ですね。
浅草のような繁華街に出かけると白い服を着た4,5人の男性がアコーディオンで演奏しながら物乞いをしていたのを目にしました。彼らは「傷痍軍人」と呼ばれる戦争で身体的な傷を負った人たちです。白い服に義足や義手を付けておりましたので子供心にとても怖かったのを憶えています。

私は1985年ころから20年ほど青少年育成を目的とした海外ボランティアに参加しており、毎年夏になると日本の中高生30人程を公募してサイパン島を訪れ、現地に残されている戦争の遺物を見たり慰霊法要をして若い人たちに戦争の悲惨さを知ってもらうという活動をしておりました。海岸には当時の戦車や高射砲、上陸用舟艇などが錆びたまま残されており、その周りで日本人観光客が水着で泳いでいるという異様な光景を見ることができました。「自分たちの父や祖父が戦死した場所で平気で泳いでいる日本人の感覚がわからない」と現地の人が言っていた言葉が印象的でした。

フィンランドに行ったとき、観光スポットで定番のスオメンリンナ島という島に行きました。行ってみてわかったのはこの島はロシアとの国境を守る要塞で、今でもフィンランドの基地がおかれているとのことでした。何の知識もなく行ったので、なぜこの場所にロシアが出てくるのか不思議でしたが、後で地図で見ると何と1300Kmに渡ってロシアと国境を接しているわけです。ロシアは南にばかり侵略してくるものと思っていたので、新たな気づきでした。

アメリカテキサス州のアラモ砦に行ったときは、そこの教会の中で帽子をかぶったままのアメリカ人の若者に対して、年長の男性が帽子を取るように促している光景を見ました。この砦はアメリカがメキシコ軍と戦って玉砕した場所で、ジョン・ウェインが主役で映画化もされています。そうした場所において、お気楽で礼儀知らずだと思っていたアメリカ人でもきちんと礼儀をわきまえるのだなと感心しました。なおここは砦と呼ばれていますが実際は教会です。

同じくアメリカのワシントンD.Cではキング牧師の演説で有名なリンカーン記念堂に行きました。この建物から見て左にはベトナム戦争戦没者慰霊碑、右には朝鮮戦争戦没者慰霊碑があります。そこには今でも花が手向けられており、大勢の人がそこで参拝をしていました。夕方で暗くなっている中、たくさんの蛍が飛び交っているのが印象的でした。
今日では日本とアメリカは友好国ですから対日感情もおおむね良好です。ホワイトハウスを見学する数時間の現地ツアーでも、バスの中でガイドが乗客一人一人にどこから来たのと尋ねていきます、私の番になって日本から来たよというと、おお、ケネディー(キャロライン)が日本に行っているよね、というので、そうそう、皆歓迎しているよと返しました。さすがにワシントンD.Cのガイド、政治的なことはよく知っています。しかし、このベトナム戦争と朝鮮戦争の慰霊碑が物語るように、一昔前は日本は敵国であり、韓国軍は友軍でした。現地に行ってみると、韓国はずっとアメリカの友好国だったということで日本よりも高いプレゼンスを保っているように感じました。

8月ということで戦争に関する私の記憶を共有しましたが、来年は戦後80年を迎えます。これまで平和を謳歌してきた日本でもここ数年は権威主義国による軍事的脅威が高まり、ミサイル警報が出されることも珍しくなくなりました。ロシアによるウクライナ侵略戦争も継続中で、中東での紛争(というよりもすでに戦争)もより本格的な戦争に拡大していく様相を呈しています。
終戦記念日となる8月、この機会にもう一度平和のありがたさ、何もない日常がどれだけ貴重なものかということを再確認したいものです。

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