プロの固定観念

【2011年11月28日の朝礼でのスピーチより】

 

もう10年以上前に、Webカメラによる監視システムを開発してセルフガソリンスタンドに販売するというビジネスをやりました。

 

その時期、監視システムとは全く違ったコンセプトの新しい商品を思いつきました。そのアイディアは、飲食店などの内部にWebカメラを設置して、その様子を外部に液晶ディスプレイを置いてみせるという物です。

 

店が地下や2階にあるような場合、初めてのお客さんからするとどんな雰囲気の店なのか、どのくらいの客が入っているのかなどがわからないのでちょっと躊躇します。たとえば女性が一人で安心してランチを食べられるような店かどうかを、外部にあるモニタで確認できるようになれば、ただの看板を置くよりも集客できるのではないかと思ったのです。

 

ついでに、店名やメニューなどを交互に表示してやれば簡単に内容を変更できる看板になります。つまり、今でいうデジタルサイネージです。

 

このアイディアについてプロに聞いてみようと思い、知人の紹介でディスプレイ、看板を取り扱っている会社の社長と話をする機会を設けてもらいました。きっとこのアイディアを面白がってくれると思ってその社長に話をしましたが、意に反して反応は良くありませんでした。

 

つまりは「液晶ディスプレイなんかを屋外におくのは非常識」ということでした。雨に当たったらどうする、風や酔っぱらいに倒されたらどうする、値段が折り合わない、など理由は様々でしたが、今思うとそれらは本質的な問題ではなかったように思います。

 

ようは、プロの看板屋つまりは既存の「カンバン」というものしか取り扱ってこなかった人にとっては、これからも「カンバン」で食っていくので、IT機器を持ち込もうなどとはハナから考えられなかったのだと思います。

 

例えばウォッシュレットがなぜ西欧で開発されなかったのかというと、あちらではトイレはあくまでトイレであり、電気設備をそこに置くなどということは思いも寄らなかったということだそうです。それに対して日本ではいわゆる洋式トイレの歴史は未だ浅く、トイレはこうあるべきという固定観念がなかったことによると思います。

 

私が初めて洋式トイレに出会ったのは小学校6年の時、小樽の叔母のところに滞在していたときに近所のホテルへ遊びに行きました。そこには築地にすんでいるいとこ達親戚が宿泊していたので、皆と一緒に映画館で「007死ぬのは奴らだ」を見に行った帰りのことでした。

 

ホテルの部屋で遊んでいた時にもよおして「ちょっとトイレ」というと、トイレは中にあるからそこを使いなさいといわれたのがその洋式トイレ。私は洋式トイレのみならずユニットバスも初めて見たので、戸惑いながらも壁面に貼られた図解入の説明書を一生懸命読みました。一番抵抗があったのはやはり座ってするということです。トイレはしゃがんで踏ん張る物と思っていた私にとって、おしゃれにイスに腰掛けながら大をするというのは、ベッドに寝たまま用を足すかのような違和感があったのを憶えています。

 

しかし、今の子供達、うちの小学生の娘達もそうですが、和式を利用したことがほとんど無いので、逆に和式だと踏ん張れないそうです。驚くばかりですが、下の娘は和式では絶対に用を足しません。

 

とにかく、その道のプロフェッショナルというのは、逆に言うとその道しか知らず近視眼になっているともいえます。私もITのプロフェッショナルのつもりですが、世の中にインパクトを与えるようなITサービス(ヒット商品)を世に出せるかというと、ちょっと自信がありません。

 

世の中でヒットしたITサービスの多くは、素人が「こんなことができたらいいのに」という思いつきから始まっている気がします。エンジニアというのは、自分がそれを作れるかどうかというところから発想してしまうので、自分が「そんな厄介なものを作れといわれたらどうしよう」と思ってしまい、自然とそのような発想をしなくなります。

 

だから、時々は温泉にでも浸かりながら、頭をリセットしてこんなことができたらいいのにと思いを巡らせることも必要な気がします。自分がドラえもんの作者である藤子不二雄だったらどんな話を作るだろうか、というような人を楽しませる、助ける、喜ばせるという観点に立ち返りたい物です。

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