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ある本によると、銀行が中小企業に融資する際の判断材料として面白いものがあるようです。社長が高級外車に乗っているかどうか、分不相応な立派な社長室があるかどうか、平日にゴルフに行っているかどうかなど、なるほどと思わされます。その中にトイレが汚い会社には金を貸すなというのがあります。これは、トイレに限らず社内の掃除がきちんとされている会社は、社員のモラルが高く内部統制もしっかりしているということの表れととらえるからでしょう。人目に付く場所を掃除するのは普通なので、目につきにくいトイレをチェックするのです。
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情報セキュリティマネージメントでも、クリアデスクトップという項目があります。机の上を常にきれいな状態に保つことが、情報の管理上重要であるというのがその趣旨です。確かに書類等を整理整頓しておくということは良いことですが、実行するのはなかなか大変です。特にいろいろな案件を同時並行でこなしている人にとっては、整理に要する時間も馬鹿にならず、机の上がいつの間にか書類の山となってしまいます。
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著名な作家や新興IT企業の社長の書斎がテレビや雑誌で紹介されることがありますが、案外とっ散らかっていたりするものです。一方、経済誌などの記事で、大企業の社長のインタビューと一緒に本人の机が写真に撮られているのを見ると、まさにクリアデスクトップだったりします。広くて立派なオーク材の机の上に、万年筆やペーパーナイフなどの高級文房具のほかは何も置かれていない様子を見ると、こういった人は秘書が何でもやってくれる、雇われ社長(非創業社長)のように思うのは私の偏見でしょうか。
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私が寺にいるときは嫌というほど掃除をさせられましたし、禅宗では掃除というものが修行の手段としてとても重要な意味を持っています。しかし、私は掃除があまり好きではありませんでした。掃除してもすぐに落ち葉で汚れたり、折角箒目を立ててもすぐに人の足跡でぐちゃぐちゃになったりすると思うと、モティベーションが上がらないのです。これは私の未熟さのせいかもしれません。
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しかし、私が掃除や整理整頓ということの中で重要だと思うのは、必要なものがすぐに取り出せる状態を作るということにつきます。人は何かを思いついても、それを思いとどめておくことは大変困難です。せっかくよいアイディアが浮かんでも、手元にそれをメモするノートがなければすぐに忘れてしまいます。
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家にあっても同様で、役所から来た書類や銀行からの通知書など、適当にその辺に突っ込んでおくと肝心な時にどこにやったか分からなくなります。私の場合はA銀行、B銀行、税金、車関係などといったようにそれぞれカテゴリ別のA4のケースを用意して、そこにただ入れておくだけの方法をとっていますが、これだけで随分と違います。
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仕事でも私生活でも、自分の所持品の中で必要になったものがすぐに取り出せる状態になっているかどうかは、その人の自分自身に対する評価(セルフイメージ)にも影響する大問題です。買い物に行く時にお店のメンバーカードが見つからないとすると、「あれ、どっかで見たんだけどどこへやったかな?」、「ちくしょー、どこにも見当たらないぞ」、「またどっかへやっちまった」、「ああ、おれは駄目だ」と自己嫌悪に陥ったりします。こういったことが続くと自分はだめな人間であるという自己イメージが固まります。