【2011年4月11日の朝礼でのスピーチより】

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最近はパソコンソフトをインストールときにユーザが簡単に操作できるように親切なダイアログボックスで案内されます。
WindowsやMacでは当たり前ですがLinux系ではまだまだコマンドラインでのインストールが主流ですね。

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ところでこのようなダイアログボックスに書かれている日本語を読んで、違和感を覚えることが多くありませんか?
これは、海外製のアプリケーションを日本語対応にするときにどうしても直訳っぽくなり、日本語としてぎくしゃくしてしまうのです。

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まあ、これらの文章は多少の気持ち悪さを我慢しながら読み飛ばしていきますが、インストールの最後に出てくる「おめでとうございます」だけは何とかしてほしい。原文ではおそらくCongratulations!になっているのでしょう。訳せば確かに「おめでとう」ですが、たいがいの日本人はパソコンのソフトが無事にインストールできただけで「おめでとう」などとは叫びません。

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おそらく欧米人はちょっとしたことでもCongratulationsと表現するのでしょうが、日本語の「おめでとう」は、年に一度の正月や誕生日を迎えたとき、子どもが生まれたとか結婚したとか、人生の一大イベントの時に使用するものでCongratulationsに比べるとかなりハードルが高いのです。

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たぶん、翻訳した人だって、「日本人なら普通この場面でおめでとうとは言わないだろう」と思いつつも、他に適切な言葉がないので妥協しているのでしょう。私も、「じゃあ他に何と言えばいいのか」と問われると答えに窮します。

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中にはインストールの最後に「お疲れ様」と言ってくるものがありますが、これは「おめでとう」に違和感を覚えた訳者が、それに代わる言葉として苦し紛れに置き換えた単語でしょう。しかし、たかが数クリックでパソコンから「お疲れ様」とねぎらわれるのもどうにもおちつきません。こんなことで「お疲れ様」といわれると、自分が老人ホームで介護を受けている老人になったような気分にさせられます。

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ここで気づかされますが、日本語には日常のちょっとした幸せに対する表現がないのです。考えてみると、1日に10回くらい起きるちょっとした幸せに対していちいち「おめでとう」言っていたらどうなるでしょう。例えば、朝のゴミ出しがぎりぎり収集に間に合って「おめでとう」、仕事がひと段落してコーヒーが飲めて「おめでとう」、頼まれていたレポートを提出して上司から「おめでとう」、そんなにおめでとうを連発したらおめでとうがインフレを起こして安っぽい単語に堕落します。

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こんなとき、口語であれば「やったね!」とか「ナイス!」とかでいいのですが、敬語表現では適切な言葉が見つかりません。そこで提案ですが、Congratulationsを無理に日本語ンにしようとするから悩むので、これは素直に「Congratulations!」と書けばいいのではないでしょうか。今の日本の教育レベルであれば、義務教育を終えた人ならCongratulationsくらい読めるでしょう。

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先日NHKのニュースで女子アナが席巻を「せきまき」と読んでいたのでコケましたが、日本語でも英語以上に読みの難しい単語があるくらいです。音読み訓読みで悩むこともありませんから、このくらいの単語は素直に英語表記で読ませればよいのではないでしょうか。インストールが終わり、「Congratulations! これで完了です」と言われたら別に違和感は生じません。是非こうして欲しいですね。

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さて、あるソフトをインストールし終わってダイアログを閉じると、次に最後の案内ダイアログが出てきました。そこには「さあ、あたらしい世界を体験してください」と出てきました。「体験?、うーむ、新しいソフトを使うことが“体験”とは大げさな」、とまた悩むのでした。

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