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徒弟制度再来 2/2

【2011年3月7日の朝礼でのスピーチより】

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昔(昭和40年頃まで)であれば、それなりに教育レベルも高かったし多くの兄妹にもまれて育ってきて根性もあったので、たとえ中卒でも「金の卵」と中小企業はもてはやし、企業側が一から教育したものです。しかし、今は一から教育ではなく、多くの若者はマイナス百から教育しなければならない羽目になるので、そんな悠長な、寛容な中小企業はどこにもありません。

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これは当然のことです。給料払って教育してあげるというこれまでのスタイルが異常だったのです。
今は日本国内でも若者による就職先の争奪戦が激しくなっております。「私は大学を出ました、さあ使って下さい」という姿勢は通用しません。しかも競争相手は日本人だけではありません。居酒屋などに行って気づきませんか?アジアの若者達が一生懸命働いていますが、それは日本人の若者が就職争いに敗れていることを示しています。

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日本人だから、日本語がしゃべれるからといって安心はできません。もう一度先ほどの寿司屋の職人に戻って下さい。指示しないと動けず、就業時間以外は一切勉強も練習もせず、高い賃金を取っていく日本の若者。店の開店時間中でも平気でメールをやっている馬鹿者。日本語が通じると言ったって、魚の名前どころか、河岸や仲買の役割といった流通のしくみも知らない、知ろうとしない、上座がどちらかといった日本の常識なども全く知りません。

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何も知らない若者にきちんと教育をしてやるのも大人の役割だと思って、懇切丁寧に説明しようとしますが、聞いている相手は関心がなく、「何でそんな話聞かなきゃならないんだ」という明らかにめんどくさそうな態度で、しまいには説明している途中で居眠りを始める始末です。

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そんな人間より、言葉はたどたどしくても愛嬌があり、勉強熱心でこちらが説明するとうれしそうに聞いてくれてメモも取る、見ていないところでも、就業時間外でも懸命に努力している若者がいたら、たとえ国籍が違ってもそういう若者をかわいいと思うし、自分が何かを伝えてやりたいと思うのが当たり前です。

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すでに世の中の流れは変わっています。今のような就職氷河期の時代に生まれたことが、バブル期を体験し高額な年金をもらってリタイアする人たちに比べて不幸なのかも知れませんが、戦争を体験しなければならなかった人たちはもっと不幸でした。

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新卒であっても、手ぶらで会社に行っては門前払いとなります。といっても、資格を取ればいいというものではありません。熱意を持ち、仕事に興味を持ち、自分が必要とされる人間になることに喜びを感じるという基本的、精神的なスタンスが大切です。20歳過ぎてもいつまでも反抗期を卒業できずに何かに怒りをぶつけたくていつもふてくされているような、それでいて何も行動を起こさないような人間はどんどん置いていかれ(無視され)ます。他に有用な若者が世界中からやってくるのですから。

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自分自身の時間を価値あるものを創造することに費やすことです。ものを作るでも良いし、コミュニティを作っても良いのです。自分が何かの行動を起こし、それによってどのような違いを引き起こしどのような価値を作りだしたかということが客観的に説明できるような学生であれば、企業は大歓迎します。

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地元の小学生達を集めて野球チームを作りました。親とのコミュニケーション、対戦相手を探す、グラウンドを借りる、会費を徴収する、そのようなマネージメント経験は役に立ちます。そうした活動の中で、当然失敗をします。そしてその失敗した経験を次にどう役立てたか、という話を面接官の前でできれば大したものです。自分たちのチームがどのくらい強くなったのか、明確な目標に対して現在の自分たちはどの位置にいるのか、何が足りないのか、そうした検証作業も必要であり、たかが野球チームと言っても、沢山学ぶ要素があります。

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こんな体験を2つ3つ持つことが、俄仕込みの面接の訓練をするよりもずっと大切なことであり、これは、就職活動に有利とか言うことではなく、あなた自身の一生の財産となるものです。

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徒弟制度再来 1/2

【2011年2月28日の朝礼でのスピーチより】

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先日、母校の専門学校で学生相手に1時間ほど講義をしてきました。100人以上の学生が集まってくれて、社会人になるにあたっての心構えとか就職に役立つと思われるような話をしましたが、1時間では時間が足りず思っていたことの半分も離せませんでした。
以下は学生向けに話そうとして用意したネタですが、話せなかったのでここで公開します。

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社会は需給バランスで動いています。貨幣の価値、株価、商品の価格、就職率など。そしてその社会は、いまやグローバルつまり世界規模でシームレスにつながっているのです。

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日本がまだバブル全盛だった頃は人材不足、というかGDP(付加価値)の増加分に対して人材の供給量が変わらなかった(日本人学生の新卒は毎年100万人くらい)ために求人倍率はとても高くなりました。当時は入社してくれたら海外旅行にご招待とか、入社式を有名なディスコで開催したりなどと、新卒学生に対して大サービスをしていました。

しかし、それも今は昔です。ちょっと例えばなしをします。

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あなたが腕のいい寿司職人だとしよう。
あなたの店には就職希望の若者がしょっちゅうやってきます。あなたの店が雑誌で紹介されているのを見て自分も寿司職人になりたいと思ったそうです。

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しかし、そのほとんどはまともに料理の勉強もしていない、それどころか魚の名前も包丁の握り方も米の炊き方も知らない。たまに面白そうな奴だと思って雇ってみるが、店にいてもただぼーっと見ているだけで自分から動こうとしない。何かを指示するとそれなりにこなすが、洗い物とかゴミ捨てなど単純な仕事に限られる。

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「酒の在庫を確認して切らさないようにお前が管理しろ」などと言う漠然とした指示をするともういけない。いつになったらやるのかと思ってみていても全く何もせず、結局品切れとなる。問いただすと、どうやって在庫を確認すればよいのかわかりませんとの返事。

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店のメニューを渡して、ここに書いてある銘柄の酒が裏の倉庫にあるから一覧表にして、足りなくなりそうな銘柄があったら事前に注文するんだ。と説明してやります。

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しばらくすると、今度は「残りがどのくらいになったら注文すればいいんですか?」と聞きに来ます。1日の平均来客数やそのうち何割くらいの客が酒を頼むのか、それを考慮すると、注文してから配達までの時間差も考えてこれこれこのくらいと、丁寧に教えてやります。

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またまたしばらくして、「足りなくなったとき何本注文すればいいんですか?」と聞きに来ます。「はい、n本です」と答えられるような簡単なことではありません。酒は冬場の方が売れるから多めにストックしておく必要があるし、吟醸酒の場合、夏場は余り長く貯蔵しておくと味が悪くなるので加減しなければなりません。

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こうしたことを一々言葉で説明するのは大変なことですが、相手は「教えてくれなければできません」という態度です。親方であるあなたは、「そんなことはもう店に1ヶ月もいるんだから大体わかるだろう」とキレます。

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それでも、時間のあるときには必要な知識を一つ一つ説明してやります。例えば仕入れに関して。魚河岸はどこが運営していて、仲買人の役割やどういった客が買いに来るのか、一つ説明するとわからないことがますます増えるので、その分質問が増えます。2時間もかけてじっくりと説明しているのに、新人はメモすら取りません。「俺は別に世間話している訳じゃない、このくそ忙しい中2時間もしゃべらせておいて、お前は社会科見学の小学生か?」と心の中で叫びます。

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ある週末、常連の上客がやってきてお気に入りの酒を注文される。ところがその酒がないという。例の新人に問いただすと、この間注文しようとしたら酒屋が休みでした。と、まるで酒屋が休みだったのが悪いかのように言い訳する。腹が立って腹が立ってしょうがないあなたに怒鳴られた新人、翌日から来なくなりました。

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以上はただの作り話ですが、こんな状況が実際であります。

さて、それでも世の中の景気がまだ良くて、あなたのお店が繁盛しているうちは、こんな若者でも何とか育ててやろうと手取り足取り教えてやります。それはすなわち自分の時間を彼に投資していることになりますので、その間は店の仕事はおろそかにならざるを得ません。

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魚をさばくにしても、新人にやらせた仕事など客に出せるわけもなく、仕入値の高い高級魚が賄いの食事に回されることになります。こうした時間や品物の提供は金額に直すと結構な出費となります。また、何年もかけて折角育てたと思ったら、さっさと他の店に移るものもいます。一度、何で辞めるんだと聞いたことがありますが、「自分でやっていく自信がついたので辞めます」と言われたときには全身の力が抜けます。

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しかし、今のように不景気になり、同業者がばたばたつぶれていくと言う中で、ものになるかどうかわからない新人にあれこれ手をかける余裕はありません。勢いほったらかしになりますので、新人は長続きしませんが、不況なだけに次から次から応募者はやってきます。つまり、需給バランスが逆転したのです。そうなると、昔のように「仕事は体で覚えろ」、「先輩の仕事を盗め」ということになります。

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まあ、「一を聞いて十を知る」とまでは言いませんが、説明すればそれなりに吸収してくれてそれがそのまま行動に結びつくような人材なら良いですが、残念ながら、少子化、ゆとり教育、核家族化、コミュニティとの断絶といった、若者を涵養してくれる環境が劇的に悪化している中、教育する方が根負けします。

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