イメージ画像

結論指向(後半)

(先週からの続き)

□■■■
さて、何か結論を出さなければならない場面において、「今情報を集めているところです」という回答をよく耳にしますが、これは体よく言い訳をいっているだけといえなくもありません。日ごろこの言葉に慣れてしまっているので、私自身も「そうか、情報が足りなければしょうがないね」という思考パターンに陥ってしまっている気がします。このために、問題解決が長引く、あるいは問題がそのままほったらかしになるということはままある話です。

■□□□
そしてもう一つ。日本人の特質として、まず最初に枠組みを作りたがるという点も指摘しておきます。昨年、ある組織を立ち上げ総勢50名ほどのメンバーに集まってもらって会合を開きました。第1回目の会合なのでまずは実施することを重視し、日取りだけ決めてあえて細かい取り決めはしないでおきました。しかし、メンバーの中から「会則を作るべきではないか」という意見が出ました。私は「そうら来た」と思いました。この手のことを始めようとすると、必ず最初に規則を決めようという人が現れます。しかし、仮にそのような規則を作るのに一体どれだけの時間がかかるのでしょうか。そして、その規則の持つ意味はどれほどのものなのでしょうか。そういったことにエネルギーを費やしているうちに最初のモチベーションが薄れて、結局は企画倒れになってしまうことが非常に多いと思いませんか。

■□□■
日本と欧米の考え方の違いを見せつけられるものに履歴書があります。日本の履歴書はたいがい決まったフォーマットで枠が設けられており、応募者はこれらのマス目にいかにきれいに文字を埋めるかにエネルギーを注ぎます。対して欧米のレジュメは、特にフォーマットは決まっていないようです。決まった大きさの枠もないので皆自由に書きたいことを書いてきます。ページ数も決まっていません。日本の履歴書に慣れた目からは非常に見づらいものですが、反面字数の制限がないので自由に言いたいことを記述することができます。日本人は他者から決められた“枠組み”というものがないと不安になったり気持ち悪く感じたりする習性をどこかで身につけてしまっているのでしょう。

■□■□
「とかく日本人は云々」といったもののいい方はしたくありませんが、色々な人の本を読んだり講義を聞いたりする限りにおいて、どうも“リーダーシップ”、“戦略”、“レスポンシビリティ”(あえて“責任”ではなく“レスポンシビリティ”と表現します)といった資質が日本人には欠けているようです。かくいう私も日本人であり、多分にこれらの資質を持たずに成人したように思います。

■□■■
私が多少なりとも結論指向的特質を身につけたとすれば、それは日本の義務教育課程における「洗脳」状態からある程度解放されたということかもしれません。会社経営においては、決められた期限までに結果を出すという行動を繰り返し実行しなければなりません。私も経営者を20年近くやっているので、そうした中から自然と「洗脳」が解けたのかもしれません。(ちなみに20代から10年間続けたバンド活動も大きな意味があったと思います。毎月のようにライブの予定が組まれ、それまでの限られた時間と情報の中である程度の結果を出さなければならないからです。しかし残念なことにそれほどの結果を出せなかったのでそちらの道はあきらめて、今はこの会社を経営しているわけです)

■■□□
ジグソーパズルやクロスワードパズルにはまる人が多いということも象徴的です。たまたま広げた新聞や週刊誌にクロスワードパズルが載っていて、それと格闘して何十分も費やすというのは全く戦略的ではありません。ただの行き当たりばったりです。時間が余ってしょうがないなら別ですが、多くの場合、ヒマだと言っている人は当面の目標がないからです。

■■□■
決してこうした娯楽を否定するわけではありません。しかし、やるなら「気分転換のために30分だけ」と時間を決めてやればよいのです。日本人の性格として、身近にあってちょっとした努力で解決できる事柄には熱心に取り組むが、答えのないような問題に対してはこれを遠ざける気がします。細かい作業にハマりやすく、大局を見失いがちだというのが日本人の一つの典型的な欠点かもしれません。大東亜戦争でも、大鑑巨砲主義と精神主義で戦略なき戦争に突っ走ってしまったことから、ここ最近の特質ではないようです。

タグ

結論指向(前半)

□□□□
冒頭に元米IMB会長ルイス・ガースナー氏がビジネススクールについて語った言葉を紹介します。

「ここ(ハーバードビジネススクール)で学ぶ最も重要なことは、状況がはっきりしないまま、限られた情報と限られた時間の中で、いかに事態を分析し、判断を下すかということだ」
― 2002年11月9日 日経新聞 私の履歴書)より ―

□□□■
ロジカル問題解決(著:津田久資)という本を読みました。この本では問題解決の重要な心構えとして、限られた情報をもとに、ベストの解決策を導き出すマインドとして「結論志向」を挙げています。洋の東西、時代を問わずリーダーとして普遍的に必要とされる資質といえるでしょう。

□□■□
しかしながら日本の現状について著者は「とかく日本のビジネスマンは、ベストの解決策を導き出すためには、まずは情報を完全に収集しなければならないと考えがちのように見受けられます。」と述べています。日本人の多くは「結論志向」ではなく「完全情報志向」であるというのです。

□□■■
著者自身も米国の大学(おそらくバークレー校)のMBAに入学した当初は、ケーススタディの調査で、「このような不完全な情報では何もいえない、もっと情報が必要だ」という回答をしてしまったそうで、当時の自身を振り返り典型的な日本人のパターンを露呈していたと語っております。

□■□□
これと同様の話を元マッキンゼーのコンサルタント、大前研一氏が述べていました。氏のMIT(マサチューセッツ工科大学)留学時代の話です。教授に質問されたので「ちょっと図書館で調べてきます」と答えたら、教授は大前氏にチョークを投げつけてこう言ったそうです。「なぜ図書館なんだ! この問題を私とキミが解決できなかったら、世界中の誰が解決できる? ここは天下のMITだぞ。図書館に答えがあるような問題に取り組む場所じゃない。」
― 「PRESIDENT 2008.5.5 大前研一の日本のカラクリ」より抜粋 ―

日本人が全て「完全情報志向」なのかどうかは分かりません。私には外国への留学経験もなければ外国人ビジネスマンと仕事をしたこともないので想像を働かすしかありません。しかし、上記の二人の話からなるほどと思う点があります。

□■□■
日本人はコツコツとものを積み上げていく作業が好きな性質を持っているような気がします。そういった性質が製造技術に生かされ、高品質な製品を生み出しているという側面から、それが悪いこととはいえませんが、デメリットとして働く場面もあるようです。たとえば航空機産業などはよい例です。最近ようやくMRJという国産ジェット旅客機の開発に乗り出した日本ですが、この国の製造技術の高さを考えると他国に比べて非常に出遅れたなという感じを否めません。

□■■□
すでに大手航空機メーカーの下請けとして、複合材料をはじめとして様々な部品を供給し、旅客機の1/3から1/2は日本の製品であるといわれます。しかし、旅客機を1機丸ごと製造するには至っていません。航空機産業にはそれをビジネスとして成り立たせるための長期戦略が必要で、国際的な営業力および政治力、サプライチェーンを構成する能力、プロジェクトを管理遂行する能力、長い年月にわたり安定して保守サービスを実施する能力などが必要であり、ただ単に部品を作る技術だけでは、まったくもって足りないのです。

(後半は次週へつづく)

タグ

休み

電車遅れのため朝礼なし。

タグ

休み

休日

タグ

このページの先頭へ