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行き過ぎた安全管理 1/3

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工事関係の仕事をしている知り合いから聞いた話です。
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その職場では、あるときから事故防止策を強化するために、たとえ作業場所が地上1メートルの高さであっても安全ベルトを必ず2本用いることを徹底したそうです。
そうした中、ある作業員がトラックの荷台に重量物を積み込む仕事をしていました。作業場所は地上から1メートルもない場所でしたが、彼は規則どおり安全ベルトを2本結びつけました。どこに?
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トラックの上に安全ベルトを結び付ける場所などあるのでしょうか。せいぜい荷台のふち(ゲート)くらいでしょうが、もちろんそんなところにつないだって意味はありません。そこで彼は、すでに積み込んだ荷物、それはおよそ高さ2メートルほどの木箱ですが、それの梱包ロープに結びつけたのです。この木箱の中には重量物がおさめられておりましたので、何となく簡単には動かない頑丈な場所だと思ったのでしょう。
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そして作業が終わり、いつものように安全ベルトを外すとトラックの荷台から下へ飛びおりました。ここで彼は大きな過ちを犯していました。それまでこのような作業では安全ベルトは1本しかかけていなかったのですが、今回の安全ルールの見直しにより安全ベルトを2本かけていたのです。しかし、彼はついいつもの癖で1本を外しただけでもう一本の安全ベルトがまだ荷台の上の木箱に結び付けられていることを忘れていたのです。
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元気に飛び降りた彼の体に結び付けられていたもう一本の安全ベルトがピーンと伸び切ったと思うと、荷台の上の重量物がそれに引っ張られてぐらりと傾きました。重い荷物でも横から引っ張られると簡単にバランスを崩します。運の悪いことにこの荷物はまだ輸送用の固定がしていなかったのです。結局彼は荷台の上から落ちてきた重量物に押しつぶされて亡くなってしまったそうです。
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現場でどのようないきさつがあってこのようなルールができたのかは知りませんが、トラックの荷台上での作業に果たして安全ベルト(命綱)が必要なのでしょうか。素人からは全く無用なルールに見えます。幼稚園に通う私の娘でも、児童公園に行くと2メートルくらいの高さのジャングルジムに平気でよじ登ります。もちろん、命綱はありません。この不幸な犠牲者は、行き過ぎた安全ルールと皮肉なことに命綱によって命を奪われたのです。
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人間には本来自己防衛能力があります。どの程度なら危険であるかという判断は、人によりまちまちでしょうが、自分ならこれくらいは大丈夫だという目安を持っているはずです。しかし、工事の現場ではなかなかそうした個人の判断にゆだねるということが難しくなります。人は間違いを犯しますし、同じ人間でも仕事に慣れてくると油断したり自己の能力を過信したりするので、そうしたことが事故の大きな要因となるので一定のルールはどうしても必要になります。
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酒を飲んだら車を運転してはいけないというのは、そのような最低限のルールの一例です。同じ1合の酒を飲んでも人により酔う程度は違うでしょうが、飲んだことにより素面のときより安全に運転するということは普通あり得ませんので、当然のルールです。しかし、トラックの荷台での作業にまで2本の安全ベルトを強要するのは行き過ぎではないでしょうか。もちろん、安全対策にやりすぎはないといえるかもしれませんが、このケースのようにそれが逆効果となって、人の命を奪うことになってしまっては本末転倒です。

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